第16話

どの位、何を本村にむけて吐き出していたのか、よく覚えいない。


ただ、少しずつ胸の奥が軽くなっていくのが分かった。


隣に座っている本村の横顔が、何の変化も見せないのが、なんだか彼らしくっておかしかった。


本村って、イケメンなんだよね。


私なんかにかまってないで、彼女作ればいいのに。


本村なら健太と違って、彼女のこときっと大切にしてくれるんだろうな……。



「ごめんね、本村」


「吐き出して楽になったか……」


「ん。ありがとう。私はもう少ししてから戻るから、本村はもう戻って……」



実は話しながら泣いてしまっていたみたいで、顔がすごいことになっているのだ。


こんな顔で席には戻れない。



「今度飯奢れよ?そしたら、その不細工顔わすれてやる」


「うるさい」



不細工と言われて、本村の肩をペットボトルでどついてやった。


痛い、なんて文句を言いながらも、彼は私を一人にしてくれるようで、部署へと戻っていった。


温くなったお茶を少しずつ飲みながら、泣きすぎたせいか、ムカムカしてきて、私はあわててトイレへ駆け込んだ。


胃の奥から競り上がってくる吐き気に耐えられず、吐き出してしまう。


最近食事もとっていなかったせいで、上がってくるのは胃液だけだ。


食道が焼けたように痛くなった。

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