第3話

「久しぶりに一緒にお風呂入ろうか?」


「ばか」



揶揄うような健太の言葉を片手で払って、ベッドから抜け出た。


ソファで抱き合っていたはずなのに、気づけばベッドの上でもう1回、もう1回と囁く健太の甘い囁きを受け入れていた。


せっかく健太が持って帰ってきてくれたワインは、いまだ飲めていない。


シャワーを浴びて部屋に戻ると、健太がワイングラスを棚から取り出しているところだった。



「健太も浴びてくれば?」



長い髪がシーツの上に散らばるのを見るのが好きだといった健太の希望を、いつの間にか取り入れている自らの長い髪をタオルで無造作に拭く。


そんな私の手からタオルを抜き取って、彼は上半身裸のまま、私をベッドに腰かけた自分の前に座らせて、優しく髪を拭く。



「そのうち乾くのに……」


「濡れたままにしてっと傷むだろ、髪。せっかくキレイなのに」



そういってひと房摘まんで口元に近づけた彼の息が、首元に迄かかってくすぐったい。



「健太の彼女って、みんな髪が長いの?」



健太の気楽に付き合っている彼女が何人いるのか知らない。


健太は私の異性関係を聞いてきたことはない。だから、私も深くは聞かないようにしている。


髪の長さは、許容範囲だろう。

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