…
「この私がスーパーの経営以外に、いったい何をしでかしたというのだ?」
どんなとばっちりで誰と取り違えて、自分を断罪しようとしているのか、それを知ってフェアにたしかめようとした。
私の見かけは人獣あいまった姿をしているかもしれないが、それ以前に冷静な男だ。やつの勘違いが解けたら、それ以上に求めることはない。
「ほう、身に覚えがないとでも?」
やつは、不敵に笑った。
「何が君の気に障ったのか、いってくれ。必要なら謝る」
しかたがないので、下手に出てみる。
公園のすぐ外の部下たちがしだいにいきり立ってくるが、眼で制した。
「何がスーパーマンだ。名前からして詐欺。その本性は外道極まりない」
こちらは家族の面前。いちいち失礼な男である。
憤慨するよりあきれてしまうが、いったいどういう育ちをしているのだろう。
時々わが社のお客様問い合わせセンターに電話を掛けてくるような、偏執的クレーマーの類かもしれない。私も毅然と対処することにした。
「それが君の主張なんだな。よろしい。その根拠を具体的にいいたまえ」
「とぼけるのが得意のようだな」
やつは、またしても聞き捨てならない台詞を繰り出してきた。
挑発行為でこの私を術中にはめようとしているのかもしれない。軽はずみなリアクションとならないよう警戒する。
「貴様は、奴隷のように従業員を働かせているだろう?」
つい、私の片方の眉がぴくりと反応する。
さては、左巻きの香ばしい市民活動家だったか。
が、奴隷扱いといわれる筋合いはない。
「どういう意味だね」
私は、いたって平静に問うた。
そう、私の会社はこの業界の中では至ってクリーンな方である。
給与は業界内ではけっして高い方とはいえないが、サービス残業もサービス休日出勤もさせていない。育休も有休も必要に応じて取らせている。
「給料が低いのは、あんな安くで商品を売っているからだ。薄利多売で現場の従業員が疲弊しているぞ」
ここで私は「おや?」と思った。
そこまで小売店の経営分析をしているなら、話が早いかもしれない。
一方的に給料を上げろとシュプレヒコールされることはなさそうだ。
「それでは、物をもっと高く売れと?」
「当たり前だ。貴様は算数もできないのか」
私は、ため息をついた。
そんな簡単に値上げできないから物を売る経営者は皆そのジレンマに悩んでいる。
つい、いらだちが高じて笑いが出てしまう。
「な、なにがおかしい?」
やつは、半身に構えてそういった。
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