Monday

第10話

今日もいつものように、誰よりも早く出社してフロアの空気を入れ替えるごとく、窓を開けて回った。


清掃業者が入った後だから、気持ち程度机周りを整えて、給湯室のポットに水を入れる。


「おはよう、いつも早いね」


1人、2人と出社してくる中で、経理部の部長が給湯室を覗いて声をかけてきた。


「おはようございます。……コーヒーですか?」


部長自ら給湯室へ来たわけは、彼が日課としている仕事前のコーヒーを求めてだとすぐに分かった。


「そう。飲まないと頭すっきりしないんだよねぇ……」


そう言いながら、戸棚の奥からKona coffeeを取り出す。


彼専用のコーヒーだ。


彼専用とはいうものの、彼はコーヒーメーカーに軽く5ー6杯は作れる量を入れてお裾分けしてくれる。


早くに出勤してくる人達の中には、このコーヒーのご相伴に預ろうという人も少なくないのだ。


部長は自分のカップにコーヒーを注ぐと

「あとはどうぞ」と言いながら給湯室を出ていった。


「いただきます」


普段はそう言いつつも遠慮するのだけど、今日はその香りに誘われて手を伸ばした。

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