“感染症“

「あのさ、蛍太(けいた)。僕ら、一緒に暮らさない?」


「僕の番(つがい)になってくれてありがと、蛍太」


「けぇた……もう………むり…!っ……」


「蛍太、僕は僕の過去を精算しなきゃいけない。…ん?いや、合理的配慮の結果さ、だから……ごめん」




──────────────────



「っは……」


飛び起きたAdamは片手で顔を覆ってため息をついた。


「どうした?悪夢でも見たか?」


「うぉっ、お前、何でこんな時間に…」


「僕が何で日中に寝こけてると思ってるんだ。夜の見張りだよ、この低脳」


光はそっぽ向いて嫌味っぽく言うとAdamが腕組みして煽る。


「お前と比べられたくないな、俺の頭の良さはeveが到底たどりつけない領域にあるぞ」


「いや、馬鹿だよ。頭の良い奴はこんな所に居ない。…君の本当の目的はなんだ」


もう何度目になるのか分からないこの質問には、決まった回答が用意されている


「俺はAdam、お前らの秘密を知ってる。その対処方も、これから何が起こるのかだって俺には分かる。俺はお前を助ける為に全力を……」


「はいはい、分かった……って、どうした」


言い終わってからAdamの様子があからさまにおかしくなった。息が上がり、顔は火照っている。


「ッeve!発情期って知ってるか?」


差し迫った雰囲気のAdamに僕は一瞬たじろぐ


「あぁ……evesが一定周期で体調不良を起こすやつだろ?僕もそろそろ来るはずだけど…それが何だ?」


「何でお前、っそれを早く言え!俺はしばらくの間ここから離れる!絶対、追ってくるなよ」


ここまで突き放されたのは初めてで、僕は妙な不快感を覚えた


「は?いや逃がす訳無いだろ。いつもみたいに外出るなら僕も連れて行け」


「それじゃダメなんだ、とにかく、俺から離れてくれ」


「君が僕らを売らない保証がどこにある?どこへ行くのか知らないが、僕も着いていく」


僕はAdamを追いかけた、あと数メートルという所まで行ったがAdamが声を上げる。


「感染症!に、かかったんだ。一般人には無害だが、evesがかかると致命傷になる。だから、少し此処を離れさせてもらう。」


苦しそうに話すAdamをこれ以上追いかけることは出来なかった。


「あと、お前は念の為この薬を飲んでおいてくれ、月に1回飲むだけで予防になる」


光は飛んできた薬をキャッチして再びAdamの方を向くと、既にそこには誰の姿も無かった。

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