第8話

一度聞いて見たら、「ユナの興味のあるものを知れるから嬉しいんだよ」なんて、付き合いはじめの頃みたいな事言ってたな。


私達付き合ってもう3年も経つのにね。


リトくんは優しい。


だから、私も優しくなれる。


だから、なんて狡い言い方だ。

相手が優しくしてくれないと優しくなれないって言ってるのと同じだし。


でも、実際そうなのかもしれない。

私って狡いから。


「ユナ、これどう?」


目的の雑貨屋で球形の加湿器を指差してリトくんが問う。


専用のアロマオイルを入れることができるタイプだ。


「あ、この香り好きかも」


ふわりと加湿器から香るジャスミン。


目を閉じれば、小さな白い花弁がふわりふわりと辺りを舞っているみたいに感じた。


「うん。ユナのボディクリームと同じ匂いだな」


あえてそうしたのか、耳元で囁かれた甘い囁き。


ずくん、と臍奥が疼いた。

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