第7話

「ははっ、」


不意に聞こえた笑い声。


リトくん?


「ユナ、去年の今頃も同じ事言ってたな。去年は……えぇと、ダックス見てた」


う、確かに。


私ってば、毎年寒くなると温かくて柔らかくて、抱き心地のいいものが恋しくなるらしい。


ほら、行くよ。

優しい笑顔と大きな掌が目の前に下りてきて、両手を引かれて立ち上がる。


キャバリアと目があって、後ろ髪を引かれても、リトくんの手を離す気にまではならなかった。


歩き出した私達は、今日の本来の目的地である雑貨屋を目指す。


暖房器具を使い始める前に、加湿器を見に行こうというリトくんの提案を受け入れショッピングモールにやってきた。


駐車場からすぐ近くにあるペットショップに足を止めた私にリトくんは急かすことなく付き合ってくれた。


同僚達の話だと、男の人は女の人の買い物に付き合う時、急かすか一人で自分の好きなものを見に行くか、そういった人が多いらしい。


そんな話を聞いて首をかしげたっけ。


リトくんは、私が見たいものを同じ目線で見てくれるなって。


それが、多分リトくんの興味の対象じゃないと思えるものでも。

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