温める方法。
第6話
「どした?」
分厚いガラスの前に座り込んでいる私の頭上から聞こえた穏やかなテノール。
見上げれば、背後に立ち両手をガラスに着いて私を見下ろすリトくんの姿。
すっかり肌寒くなってきた今日この頃。
既にモコモコのストールを首に巻きつけ暖をとる私。
リトくんは去年プレゼントしたネイビーのカーディガンを、白いシャツと細身のジーンズの上からゆるく羽織っている。
「あのコ、家にある抱き枕に似てない?」
リトくんは、私の指の動きを追うように、視線をガラス窓の向こうに向けた。
「キャバリア?」
垂れた耳と艶のある茶と白の体毛。ビー玉みたいな目が忙しなく辺りを見回している。
その目の動きとは反して、くたりと横たわる様は我が家のソファに置かれた抱き枕にそっくりなのだ。
「あったかくて、抱き心地良さそうじゃない?」
愛用の抱き枕も、長年使って愛着がある分抱き心地は抜群だけど、どうしてもこの時期は命を宿す温度が恋しい。
「うん。柔らかそうだし、温かそうだな」
「でしょう?温石代わりにしちゃ怒られちゃうけど、いいよね。……欲しいなぁ」
若干躊躇ったのは、ゲージの前に掲げられた6桁の数字を見て。
高いなぁ……。
それに、もっとお金かかるよね。
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