第4話
なんの特別もない日常の音を、ぼんやりと聞いていた。
「ココア、今日はミルク多めな?」
目の前のガラステーブルに置かれたマグカップからは甘い香りがしてる。
「リトくん、私ね、もっと頑張りたい」
甘い香りに誘われて溢れ出た声は、少し震えてる。
今の仕事好きなの。
大変なこともたくさんあるけど、好きで選んだ仕事だから、弱音なんて吐きたくない。
意地っ張りで負けず嫌いな私は、頼ることが下手で、可愛げがない。
今日もそれが原因でトラブル一歩手前。
でも。そういう黒くて重たいの、一緒に暮らしてるリトくんにまで感じさせたくない。
そう思ってるのに、弱い自分が顔を出す。
リトくんを前にしてほろり、溢れる。
「バカだなぁ、ユナは」
ふ、と零れる吐息。
「……?」
「俺達が傍にいるのは、楽しい気持ちや嬉しい気持ちだけを共有するためだけじゃないだろ?」
「リトくん?」
「辛い時や苦しい時、俺はユナが隣で笑ってくれていたらそれだけで癒される。……ユナにとっても俺がそうでありたい。だから、甘えて?」
「甘え……る?」
「そう」
「でも……」
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