第28話 【実績解除】好きな人と恋人になりました 2


 それから。わたしとひかりちゃんはベッドに隣り合って腰掛けながら色々なことを話した。お互いにお互いのことをいつから好きだったのかとか、どういうところが好きになったのか、とか。


 ひかりちゃんがわたしを好きになったきっかけのエピソードを聞いていると


「あっ、ひかりちゃんってあの時の子だったんだ」


わたしのぽろっと漏らしてしまった言葉に、ひかりちゃんは驚いたような表情になる。


「あの時のこと覚えてたんですか? 私の顔を見ても反応がなかったから、てっきり忘れちゃっていたものかと」


「あーごめんごめん。具体的に誰を助けたかまでは覚えていなかったんだけど、あの日、転入生を助けたことは覚えててさ。それまではあんまり人助けだとか、誰かのために何かをするとかってあんまり興味なかったんだけど――あそこでひかりちゃんに出会って、誰かの役に立つって気持ちいいな、って思ったんだよね。そしてそれがきっかけでガラでもないのに中学では生徒会に入って、高校になった今でも生徒会副会長とかやってる。だからある意味、あの時のひかりちゃんとの出会いで既にわたしの人生は大きく変えられていたんだよね」


 何気なく口にした言葉にひかりちゃんはぽっと頬を赤らめる。そして。


「東さんがあの時のことを覚えてくれていただけじゃなくって私、既に東さんの人生に影響を与えられていたんですね……!」


と何かを小声でつぶやいていたけれど、わたしにはよく聞き取れなかった。


「ん? ひかりちゃん、どうかした?」


「い、いえ! なんでもありません!」


 慌ててそういうひかりちゃん。これ以上の詮索は無意味そう。


「そっか。それならいいけど。けれどまあ要するに、わたし達の再会は運命、だったのかもしれないね」


 ひかりちゃんに向いてウインクして見せるわたし。それにひかりちゃんは紅潮を通り越して達磨みたいに頬を真っ赤にして


「も、もう、東さん!」


と思いっきりわたしの肩をぶっ叩いてくる。


「痛いっ! わ、わたし、何か変なこと言った⁉」


「言いましたよ! 東さんはそういうところがほんと、女ったらしだと思います。姉妹として14年間もずっと一緒にいたお姉さまに心底同情します……」


「えっ、なんかすごい言われよう……」


 そんなじゃれ合いなのかなんなのかわからない会話をしているうちに午前零時を回り、いい加減に寝る時間になった。


「東さん、今夜は私のベッドで一緒に寝ますか?」


「う、うん。お姉ちゃんのところはちょっと帰りにくいし。それに……ひかりちゃんもきっと、恋人になったからにはそういうことをしたいでしょ?」


 恐る恐る尋ねたわたしに、ひかりちゃんは以外にもきっぱりと首を横に振る。


「東さんが付き合ってすぐにしたいならお付き合いしますけれど……別に私は付き合ったら即パコりたいとか、そこまで野生児じゃありません」


「し、辛辣……。ちなみに、ひかりちゃん的にはどれくらい経ったら、そういうのをしたいと思うの? いや、わたしは別に今のところはしたいとか、そういう気持ちはないんだけどさ」


 わたしの言葉にひかりちゃんは可愛らしく顎に人差し指を当てて考え込む。そして。


「そういう大人なことは、じっくりとお付き合いを積み重ねて、付き合い始めてから3年後くらいでしょうか」


「スパン長ッ! 3年経つまでに分かれているカップル相当数いそう……」


 ひかりちゃんの言葉についつっこんでしまうわたしに、ひかりちゃんは口元にてをあてて笑う。


「半分冗談ですよ。けれど、性行為や接吻をすることだけが、恋人でもないでしょう」


 穏やかな口調でそう言ってひかりちゃんがわたしに体重を預けてくる。肩から伝わってくるひかりちゃんの熱に、わたしは邪な、というよりも穏やかな気持ちになる。


「うん、それもそうだね。ひかりちゃんとずっと一緒に、こんな風でいたい。こんな風におしゃべりする時間が楽しい。今は、それだけで十分」


 わたしの答えに、ひかりちゃんも安心しきったようにそっと目を閉じる。


 こうして。わたしとひかりちゃんの恋人になって1日目の夜は穏やかに過ぎて行ったのでした。

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