第2話 姉で居られないならば恋人になっちゃえばいいじゃない!
それから。琴音とひかりはお互いに女の子しか恋愛対象として見れないことや琴音が双葉のことを好きだという秘密を共有したことで、急激に仲を縮めていった。
琴音にとってひかりは、双葉とは全く違うタイプの妹だった。甘え上手で家ではちょっとだらしないことのあった双葉とは対照的に、ひかりは家事もてきぱきとこなし、琴音に対して常に物腰低く丁寧で控えめで、そんな双葉とは違うタイプの妹のことを琴音は『妹』として惹かれた。
そしてひかり自身も、琴音を恋のライバルと言うよりは好きな人を好きになった同志として、琴音にどんどん好意を抱いていった。琴音が双葉に対する一途な気持ちをひかりにだけ打ち明ける時の表情はまさしく恋する乙女といった様子で可愛らしく、ひかりはつい、琴音の恋路を応援したくなってしまった。
そして琴音と双葉がなし崩し的に恋人になってしまった、月1回の密会の日。ひかりはどうしても琴音についていきたいと主張した。そればっかりは琴音の恋路を応援するため、と言うわけではなく、4年ぶりに初恋相手を一目見たい、と言う下心があってのことだった。そして一目会っておけば自分に対して一目惚れ、までは行かないまでもこれから特別な関係を築くとっかかりが作れるのではないか、と。
けれど、ひかりの初恋相手が誰かなんて当然知らない琴音は、ひかりに心を許しきっていたこともあって、二つ返事でひかりの同行を快諾した。
そして琴音と一緒に、4年ぶりに双葉に出会い、琴音から簡単に自分のことを紹介された途端。
「酷いよお姉ちゃん! 双葉という女がいながら、他の女の子を妹にするなんて!」
その言葉で、心のどこかでひかりが抱いていた淡い希望は、しゅわっと炭酸のように消えていった。
——4年経って、ワンチャンあるかと期待しちゃってましたけれど、やっぱり東さんは、今でもお姉さんに対して一途なんですね。今日のために、めいいっぱいおめかししてきたんですけれどね。
そう思いながらひかりは、今日のために丁寧に整えてきた黒髪ロングをそっと撫でる。
——東さんの『好き』はお姉さまや私の持つ『好き』とは違いますけれど、少なくとも私なんて眼中なんてないんですね。だったら、私はその間に割り込むつもりなんて毛頭ありません。お姉さまと、東さんの神聖な間に挟まるなんて恐れ多すぎます。だったらわたしがやることは一つだけ。予定通り、二人に『恋人』に、『特別』になる応援を精一杯しましょう。
そこでひかりは大きく息を吸い込み、こみ上げてきた醜い感情なども全てのみ込んで、無理やり笑顔を作って提案してみた。
「それなら、東さんはお姉さまとお付き合いしたらいいのではないですか?」
と。
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