第6.5話 西園家の義姉妹
※このエピソードは第三者視点から書いています。
____________________________________________________________________________
琴音と双葉が初デートした日の夜。
ひかりの部屋を訪れた琴音は
「ひかりちゃん、今日のデートはいろいろと相談に乗ってくれてありがとう。お陰で双葉ちゃんと、一生色褪せない最高のデートができた」
と、恍惚とした表情を浮かべながら、母親と義父に見つからないようなこっそりとひかりにお土産のぬいぐるみを渡す。
「いえいえ。お姉様のためだったらこれくらい、妹として当然のことですよ。それにしても……これってなんですか? サンショウウオ?」
不思議そうな表情をしながら受け取ったぬいぐるみを弄ぶひかり。そんなひかりの言葉に、琴音は嬉しそうに更に顔を綻ばせる。
「そう! これ、双葉ちゃんが選んでくれたのよ。ちょっと高いけど、ついわたしの分も買っちゃった。でも、双葉ちゃんもお揃いで買ってたから、やっぱり買って正解だったわ。この子を見てたら、双葉ちゃんと会えない平日も、この子を双葉ちゃんだと思って気を紛らわせることができる。」
自分の分のぬいぐるみを力いっぱい、ぎゅっと抱きしめながら語る琴音。ぎゅっと抱きしめられたサンショウウオは綿が一部に寄って、サンショウウオのぬいぐるみはくしゃっとなる。
そんな琴音の言葉を聞いて、ひかりは愛おしいものを見るような目になってふわふわのオオサンショウウオを見つめる。
「東さんがわたしのために選んでくれた。しかも、東さんとお揃い……」
ひかりの中で嬉しさが込み上げてくる。それと同時に、絶対にしてはいけない勘違いも。けれどすぐにひかりは、ひかりが望む関係に双葉とはなれないことを思い出して、頭に浮かんでしまったことを振り払うようにかぶりを振る。
――これ以上を期待しちゃダメだ。これ以上を期待したら、絶対その期待は叶わずに、自分が辛くなるだけだから。
そう自分に言い聞かせる。
――けれど、『憧れの東さんにプレゼントを選んだ』ってことだけなら、喜んだっていいよね?
そう誰に了承を得るでもなく心の中で呟くと。ひかりは大切そうにオオサンショウウオのぬいぐるみを、優しく抱きしめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます