第6.5話 西園家の義姉妹


※このエピソードは第三者視点から書いています。

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 琴音と双葉が初デートした日の夜。


 ひかりの部屋を訪れた琴音は


「ひかりちゃん、今日のデートはいろいろと相談に乗ってくれてありがとう。お陰で双葉ちゃんと、一生色褪せない最高のデートができた」


と、恍惚とした表情を浮かべながら、母親と義父に見つからないようなこっそりとひかりにお土産のぬいぐるみを渡す。


「いえいえ。お姉様のためだったらこれくらい、妹として当然のことですよ。それにしても……これってなんですか? サンショウウオ?」


 不思議そうな表情をしながら受け取ったぬいぐるみを弄ぶひかり。そんなひかりの言葉に、琴音は嬉しそうに更に顔を綻ばせる。


「そう! これ、双葉ちゃんが選んでくれたのよ。ちょっと高いけど、ついわたしの分も買っちゃった。でも、双葉ちゃんもお揃いで買ってたから、やっぱり買って正解だったわ。この子を見てたら、双葉ちゃんと会えない平日も、この子を双葉ちゃんだと思って気を紛らわせることができる。」


 自分の分のぬいぐるみを力いっぱい、ぎゅっと抱きしめながら語る琴音。ぎゅっと抱きしめられたサンショウウオは綿が一部に寄って、サンショウウオのぬいぐるみはくしゃっとなる。


 そんな琴音の言葉を聞いて、ひかりは愛おしいものを見るような目になってふわふわのオオサンショウウオを見つめる。


「東さんがわたしのために選んでくれた。しかも、東さんとお揃い……」


 ひかりの中で嬉しさが込み上げてくる。それと同時に、絶対にしてはいけない勘違いも。けれどすぐにひかりは、ひかりが望む関係に双葉とはなれないことを思い出して、頭に浮かんでしまったことを振り払うようにかぶりを振る。


 ――これ以上を期待しちゃダメだ。これ以上を期待したら、絶対その期待は叶わずに、自分が辛くなるだけだから。


 そう自分に言い聞かせる。


 ――けれど、『憧れの東さんにプレゼントを選んだ』ってことだけなら、喜んだっていいよね?


 そう誰に了承を得るでもなく心の中で呟くと。ひかりは大切そうにオオサンショウウオのぬいぐるみを、優しく抱きしめた。

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