――誰にも言えないけどいいのか?


――いい!


――友達にも言えないんだぞ?


――言わない!


――本当かよ?


――本当!


――デートもなし


――分かった。


――学校以外で会ったりも出来ない。


――分かった。


――お前が望む事を殆どしてやれないんだぞ?


――いい。


――本当にいいんだな?


――うん。


――噂になったら別れるぞ?



 そう言って、渋谷先生が一年間のあたしを想いを受け入れてくれたのは三ヶ月前。



 渋谷先生との約束があるから、長期休みでしばらく学校に行ってないと、行く時に緊張する。



 あたしと渋谷先生の事がバレてたらどうしようって緊張する。



 仮令噂でも困る。



 別れられるから嫌。



 やっと手に入れたこの恋は何が何でも手放したくない。



 その為には、学校以外で会えないのだって我慢するし、我儘言えない事だって我慢する。



 渋谷先生が素っ気なくったっていい。



 その理由は分かってる。



 甘やかしたらあたしが図に乗るって、そうなったらバレる危険性が出てくるからって、わざと素っ気ないのは分かってる。



 それでも渋谷先生は、あたしと付き合うようになってから、生徒の前で彼女がいるって言ってくれるようになった。



 そうやって、ちゃんとあたしの気持ちを受け入れてくれてる。



 素っ気ないけど中途半端に扱ったりしない。



 だからもっと好きになる。



 渋谷先生を好きになったのは、「悩殺スマイル」にヤラれたからじゃない。



 むしろあたしは「悩殺スマイル」を振り撒く先生は、先生らしくないと思ってる。



 本当はいつもいつも凄く真面目に、とっても真剣に生徒の事を考えてて、生徒のどんな些細な相談にも、ちゃんと乗ってくれる先生が好き。



 職員室にいる時の真面目な顔も、小テストのプリントを作るだけで何時間も掛けちゃうところも、自分の時間を削ってでも勉強が分からないっていう生徒に勉強を教えちゃうところも好き。



 片想いの時ですら、麻里亜や他の女子みたいに「渋谷先生が好き」って口に出して言えなかったのは、そういう感じじゃなかったから。



 キャーキャー言ってる軽い感じじゃなくて、本当に本当に好きだったから。



 だから何度断わられても、諦めきれずに告白し続けた。



 本気の想いなんだって事を必死に伝えた。



――好き。



 自分じゃどうしようもないくらい、渋谷先生が好き。

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