第3話

「汐(しお)と俺の子供欲しーなって」




やっぱり子供って言ったよ、この人。




「あのさ、スーパーとかで売ってるものを買う様な気軽さで、言わないでくれない?」




大きく溜息をついて起き上がった。




梅雨入間近になっても、まだ肌寒く感じる朝の空気に身震いしつつ、ベッドの傍に落ちている下着に手を伸ばした。




「そーか?俺と汐の子、可愛いと思うけどな」



気怠げに、頭を枕に沈め視線だけを私に寄越した彼に小さくため息をついて見せた。




そりゃ、モデル業界で名高かった『SO-TA』の遺伝子なら、きっと顔の整った子が生まれるでしょうよ。それを望む女もいるでしょうよ。




事実、その顔、スタイル、醸し出されるセクシーな気(オーラ)。




ベッドを共にして、切ない声で甘く囁かれて堕ちた私も例外ではない。




それに?



私だって、人並み以上の容姿だと、周りの評価から理解してる。



自意識過剰ではなくね?




じゃなきゃ、モデルなんて出来なかったと思うし。




今は二人とも過去の栄光だけどね。




篠宮 草大(しのみや そうた)と、


私、神薙 汐(かんなぎ しお)は、



昔同じ事務所で、ファッションモデルをしていた頃の友人だ。



そう。ここは主張しておきたい。



あくまでも、友人。



たとえ、肌を重ね合う間柄だとしても。

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