8月 静寂

第43話

「お疲れさまで……」

「わー! おめでとう、ひかりちゃん!」

「は、はるちゃん……ありがとう」


はるちゃんと次にバイトのシフトが被ったのは8月になってからのことだった。スタッフルームに入るなり待ち構えていた彼女にそう言われる。メッセージでも送ってくれていたけれど、こうして伝えたかったらしい。



「はぁ、ついに、わたしの願いが叶った」

「願い?」

「初めてひかりちゃんと対面してから、ひかりちゃんがわたしの"お姉ちゃん"になってくれないかなって思ってたの」


お……

お姉ちゃん、ですか。



「なるにはちょっともったいない気がするけど、そこは譲歩して……兄の恋路を見届けたし、これで自分のことにだけ集中できるからほんとよかった」


その言い方だと、なるがはるちゃんに相談してた感じがするけど……

多少はあったとしても、ほぼ強引にはるちゃんに押し固められたような。まぁ、感謝はしてるんだけどね。



「って、はるちゃん、すきなひといるの?」

「どうだろう。まだそこまでいってないかなー」


そうは言ってるけれど、本当は結構いい感じの相手がいるにちがいない。

わたしとなるみたいに、お互いに意地張ったりしないで淡々と次のステップに行けそうな彼女が羨ましい。

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