第38話

改札を通って駅のホームで電車を待っているあいだは、本当に最悪な空気だった。


「ねぇ、怒ってる?」

「……」

「ごめん。なるのこと、彼氏と見間違えると思わなくて。否定すればよかったね」

「……別に、それはどうでもいい」


あれ、そうなの?

やっぱりわたしのことがすきだから嫉妬して……

いや、ダメだ。

まだ舞い上がるには根拠が足りない。



「……いろいろあって、中学のときにさっきのやつの友達と付き合うことになったんだけど、わたしが何もさせなかったのが原因で別れたの。それだけ」

「なんで?」

「え、」


ここで言わせるの?

駅のホームだよ?

まだ野球帰りのひともいっぱいいるし、もうすぐ電車くるってアナウンスも聞こえるよ?


わたしの口から聞きたいと言わんばかりの表情を見せられたら、従うしかない。

これくらいでその不機嫌がなおるのなら。


「……っき、キスも、それ以上も、ぜんぶ、だけど」

「ふーん、そうなんだ」



……え?

こんなに恥ずかしい思いしながら言ったのに、反応それだけ?



あー、もう。

悔しい。

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