第36話

「……勝ててよかったね」

「そう言うわりに喜んでないじゃん」



だって。

相手チームのピッチャーが、なんかかわいそうって思ったんだもん。



「なるだって微妙な反応じゃない? うれしくないの?」

「そんなことはない。勝ててホッとしてるけど、もっと安心して見られると思ったから」


なるほど。

わたしの前だからって感情を押し殺してるのね。



「屋外の球場っていいね。ちょっと暑いけど、試合の途中であんな風に花火の打ち上げとかあったりするんだ」

「まぁ、夏限定で、あの球団が主催の試合はやってるよ」

「なにはともあれ、楽しかった。誘ってくれてありがとう」

「別に。たまたまチケット捌けてなかっただけだし」


ふーん。

そういうことにしておいてあげよう。



「……あれ、須崎?」


せっかく気分が良くなっていたのに、そのムードをぶち壊す人物がわたしの名前を呼んだ。

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