第35話
「せっかく来たし、初めてくらいはホームのチームが勝つところ見たいんだけど」
「そう思って今日にしたけど、こうなればわかんねー」
なにそれ。きゅんときた。
なるってば、わたしに勝った試合見せたかったんだ。
まぁ自分も見たいんだろうけど。でも気を遣ってくれたのがわかってうれしい。
そんな些細な喜びを噛みしめているわたしに比例するようにチャンス(?)がやってきた。8回のウラ、単打ではあるが本日チーム3本目のヒットで打者がひとり塁に出た。
そしてここで、代打としてルーキーの子が打席へ向かった。
「は? ここで代えるとかわけわかんねー。試合捨てたか?」
なるはご乱心。
でも、ほかのひとたちも同意見のようで、1塁側の観客席は不穏な空気に包まれる。
わたしは、電光掲示板の方に映し出された選手の写真とプロフィールを見た。
えっ、わたしと同い年じゃん。
めっちゃ親近感わいた。
こうなったら、この重苦しい空気を吹き飛ばすくらいの快音響かせちゃえ!
それは、初球だった。
とてつもないプレッシャーの中、完璧なタイミング、打ち方で、誰もが確信するようなホームランを放ってみせた。
湧き上がる歓声の中、打球を見送ることすらもしなかった、ここまで無失点を重ねてきた相手チームのピッチャーの背中が、なんだかとても切なかった。
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