第34話

先発ピッチャーの調子がいいのは、相手も同じだった。打者はみんな凡退を繰り返すのみ。


試合が動いたのは、5回のオモテになってからだった。



絶対的な我らのエースが、この日初めてヒットを打たれ、ランナーを許した。

しかも、その打球はきれいな放物線を描き、外野スタンドに吸い込まれていく。


ホームランだ。

まさか初めて生で見たそれが敵チームのものになってしまうとは。



「あーあ、やっちゃった」


なるも、周りに座っているひとたちもみんながっかりしている。当たり前だけど。

あれは失投だったよなぁ、とツウそうなおじさんがぶつぶつ言っていた。わたしには、そこまでの区別はつきませんがね。



この回で許した得点はその1点のみだったけれど、すっかり落ち込みモードに。


「もうダメだ」

「諦めるの早。まだ5回攻撃できるじゃん」

「今日のポジはエースの存在だけだったんだよ。完封してくれなきゃもう無理」

「そんなに? 野手が打てないの?」

「相性が悪いピッチャーではある」



シーズンの後半戦に差し掛かったので、1つのゲームの勝敗が、今季の結果を大きく左右するかもしれない(ていうかしないはずがない)んだとか。

贔屓してる球団は2位で、対戦相手は3位。あと少しで1位に手が届くから、いろいろと負けられないみたい。

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