第25話
……え?
「……ともりが、そう言ったの?」
「まぁね。でも後悔した。本命には誤解されるし、是が非でも引き受けるべきじゃなかったって」
「へぇ……なるって、すきなひといたんだ」
平静を装って会話を続けながら、わたしの脈はどんどん大きく打ち始める。
「いるよ」
「今でもすきなの?」
「うん。超鈍感だから、全然気づかれないけど」
「そうなんだ。だったら告白した方がいいんじゃない?」
「いや、ここまできたら向こうから言わせてみせる」
「ふーん、がんばって……」
なるの家まで来ると、なぜかはるちゃんが玄関から出てきてお出迎えされた。
「あれ? はるちゃん、なんで先に着いてるの?」
「こっちのセリフだよ〜。ずいぶんゆっくりなお帰りですね? 会話が弾んだのかな?」
「うるさい。どうでもいいだろ」
「てか、ダメじゃん! なるがひかりちゃんに送られてどうするのよ」
「あ、いいのいいの。わたしが断ったから。雨足弱まってきたし、急いで帰るね。傘、返す」
「えぇ……じゃあ、気をつけてね、ひかりちゃん。またね!」
「うん、お疲れさま」
この一連のやりとりのとき、わたしは奴の顔を一切見ることができなかった。
少しだけまだ降る雨が、わたしのざわつく心を鎮めてくれているような気がした。
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