第23話

「……ひかりの家まで、持っててよ、それ」

「えっ、やだ。なる、くんの家までならいいけど」

「いいよ、別に。呼び捨てすれば。だったら、おれの家に着くまで持ってて」


あれだけ重たい空気が流れていたから、もっと話しにくいと思ったのに、案外お互いに淡々と話せていることに驚いた。



歩き始めてからは、ふたたび静寂に戻った。

けれど、最初のような重苦しい感じはなく、その空気は決して居心地の悪いものではない。

わたしが中学を卒業してからは一度も顔を合わせていなかったから、あれから3年以上は経ってしまっているのか。


今こうして隣を歩いている彼にまったく会いたいと思わなかったわけではなかった。

ただ、交際が長くは続かなかった親友のともりのことを思うと、行動に移すのはどこか違う気がしたのだ。

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