第22話

そんな願いもむなしく、関係者口から出ると雨は降り続けているのがわかって、傘をさし、1本余分に傘を持っている男が外で待っていた。



「なるー! ありがとう!」

「お疲れさま。じゃあ、帰るか」

「あー、ごめん。わたし、買い物行きたいんだよね、"ひとり"で。だから先にふたりで帰っててー!」


「おい、はる……」

「ちょっ、はるちゃん……」


思わずこの男と声が重なって同じことを言ってしまった。「わたしはいないものとして」っていうか、もはや最初からいないじゃん、はるちゃんめ。



「……」

「……」



はるちゃんがいなくなってしまってからは、地獄のように重たい空気が流れた。あんなにイヤだった雨が降ってくれているおかげで、少しそれが緩和されてるのが不幸中の幸いだ。


雨は止みそうにないし、このままここでずっと待っていても仕方ないと思い、鞄の中から濡れてもよさそうなものを探す。




「……傘、忘れてるんだろ。これ、使えば」


今までずっと黙っていた目の前のこいつが、そう言ってわたしにもう1本の傘を差し出した。


「……いい。借りない」

「じゃあ貸さない。その代わり、"手が塞がってるから、持っててほしい"」



そうだ。

こいつはこういうやつだった。


ああ言えばこう言う。

今のだって、別に両手が塞がれてるわけでもないのに、言い方を変えれば、わたしが言うことをきくと思ってるんだ。

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