第5話
この日はしばらくお客さんが来なかったので、業務そっちのけで会話してしまっていた。
だから、バチが当たったんだと思う。
「わたし、兄がいるので、もしかしたらそのおかげかもしれない」
「お兄さん? そうなんだ」
「そうなの! わたしの2個上だから、ひかりちゃんの1個後輩かな? 頭良くて、顔もまぁかっこいいからそこは自慢できるんだ」
"そこ"って強調するってことは、どこかに不満があったりするのだろうか。気にはなったけれど深くは突っ込まないことにした。
相変わらず、はるちゃんはにこにこしていて、名前のとおり春の陽気な天気にぴったりな子だと思う。
「そういえばひかりちゃんって、プロ野球に興味あるって言ってたよね」
「うん、もともと高校野球がすきで観てたんだけど、気になった選手がそのままプロに入ったから」
「わたしの兄も、プロ野球よく観てるよ」
「そうなんだ。現地に行ったりとか?」
「そうそう。ちゃんとユニホーム着てね」
「へえ、結構本格的なんだね。わたしはまだ現地デビューしてなくて」
「そうなの? じゃあ、兄と一緒に行ってみたら?」
「さすがに緊張しちゃうかな……でも、ちょっと、お兄さんと会ってみたい気はするかも。興味あるっていうくらいで、詳しくはないから、選手のこととかいろいろ教えてほしいな」
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