4月 花筵

第4話

初めて九条さん……もとい、はるちゃんの初勤務は、見学に来て2週間くらい経ってからのことだった。



「高校生になったばかりの、ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします!」



初対面のわたしにあんなことが言えるくらいだから、勤務歴の長いわたしよりも周囲と馴染むのは早かった。



「いい子よね、はるちゃん」


忙しい時間帯を過ぎ、落ち着いてきたころ、例の古株のパートのお姉さんがそう話しかけてくる。


「本当にそう思います。年上のわたしなんかより、ずっとしっかりしてて……あ、いや、わたしとはるちゃんの間に年齢差はないんだった」

「ふふ。最近、わたしとシフト被るとき少ないから、話し相手ができてちょうどよかったわね」


少し前から、彼女に相談していて気にかけてくださっていたから、そう言ってもらえると心が軽くなる。


「その節は、大変お世話になりました。もう少し辞めずにやってみようと思います」

「心なしか元気も戻ったみたいだし、本当によかったわ」


ふたりでそんな会話をしていたところに、話題の張本人が休憩から上がってくる。



「なになに、ふたりでなにお話ししてたんですー?」

「えー? はるちゃんはどうしてそんなにかわいいのかなって話してたのよ」


お姉さんの言葉に気分をよくしたらしいはるちゃんは、「そんなことないですよぉ」と、まんざらでもないようす。

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