第2話

その子と一緒に店長もやってくる。


「ひかり、ちょっといいかな」

「なんですか、店長」

「この子、4月から高校生で、ここでバイトしたいんだって。今日はその見学にきたから、面倒みてやって」

「九条はるです。よろしくお願いします」

「うん、よろしく……って、店長!」


具体的になにすればいいのかを尋ねる前に、店長は無責任にもどこかへ行ってしまった。



見学ということだし、とりあえずただこの辺を見ててもらえばいいのかと思ったわたしは、そのへんにあった椅子を持ってきて、彼女に座るようすすめる。彼女は返事をしてすぐに座ってくれたのでなんとなくほっとした。



「あのー」


そわそわしながら声をかけてくる彼女に、わたしは「あ、なに?」といかにも壁を感じる返しをしてしまう。



「お名前、なんて言うんですか?」

「言うの忘れてたね。須崎ひかりです。ごめんね、バイトリーダーとかやってるくせに、人見知りなんだ。年下の子を相手にするとうまく話さなきゃと思って喋れなくなっちゃって……頼りないかもしれないけど、いちおう仕事内容はわかってるから、いつでも頼ってね」

「ひかりさん、わたし、ひかりさんとお友達になりたいです!」

「……え?」


どういう話の流れでそうなったのだろうか。こちらに体を正面に向けて座る彼女に、わたしは戸惑いを隠せなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る