大人の階段

第5話

「綾音ちゃん」


私の髪を指先でくるくるといじっている池ちゃんに話しかけられる。昼休みだから、という理由でどうしてか私の教室に入り浸っているのだが、下級生の教室に出入りしていいものだろうか。まぁ、池ちゃんがここにいてくれるのはとてもうれしいのだけれど。



「そろそろ、いいかなぁ」

「あ、お昼、足りなかったんですか?私、食欲ないんでよかったら…」

「いや、ちがうよ」

わかるでしょ?俺の言いたいこと、なんて池ちゃんが上目づかいで言ってくる。どきり、と胸が高鳴るも、池ちゃんの言いたいことなんてまったくわからない。



「わかんない、よ」

私の言葉に池ちゃんは、まぁ、そんな純粋な綾音が好きなんだけど、なんて抱きついてくるもんだから、私の心臓は破裂しそうになってしまう。


「い、池ちゃん…?」

「ねぇ、ちゅう以上のこと、しようよ」

「…え」

真顔でそんなことを訊ねてくるもんだから、あたしはためらいながらも頷いてしまったんだ。




大人の階段


(あー!あたしの綾音に近づくなー!)

(み、美玖ちゃん…!)

(大丈夫?なにもされてない?)

(いま、ちょうど綾音と俺は秘密の約束を交わしたところなんだ)

(秘密の約束?!うわあ、あたしの綾音があ!)

(いい加減、認めてあげようよ…)



---

何気に好評をいただいた【Top Secret】でしたので(まぁだいぶ前の話ですが)、番外編として、扱ってみました。だいぶ前の作品で、まったく覚えていないということもあり、キャラがだいぶ変わっていることかと思われますが、それはそれで楽しんでいただけたらうれしいです。

最後の会話は、池ちゃん、美玖、凛の3人です。わかりづらかったので少し説明を。

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