一夏の恋

第2話

夏休み、海の家でバイトすることにした。


「今日からバイトすることになりました。短期間ですが、よろしくお願いします」

あたしの言葉に、従業員のみなさんが口々によろしくお願いしますと言う。


「…で、彼が指導してくれるから。頼んだよ」

「はい。よろしくね」

「あっはい!よろしくお願いします!」

笑顔が、素敵な優しそうな人だった。



…でも。実際は、鬼畜だった。

「…もっとちゃんとやれよ。俺、初めてでもお前よりちゃんとできたけど?」

「す、すいませんっ…!」

「謝る余裕があるならしっかり仕事しろ」

人はみかけによらない。本当だった。





「すいません、うきわ貸してください」

ある日。うきわの貸出のお客さん。


男の人なのに、とても肌が白くて、パーカーを羽織っていて、とてもじゃないけど海が似合わなそうな雰囲気を醸し出している。



「ここにサインしていただければ、お好きなうきわを選んでくださって構いませんよ」


あたしの言葉に彼は「ねぇ、俺のことばかにしてるでしょ?」と言ってきた。



「え、そんなつもりは…」

「見てればわかるよ。…明日、バイトは?」

「休みですけど…」

「じゃあ、明日の昼、ここの海に来て。いいもの見せてやるから」

「いいもの…?」

「じゃあな」

そう言って彼は行ってしまった。




翌日、海へきてみると、昨日の彼が、昨日とは違った雰囲気でサーフィンをやっていた。



彼にひとめぼれした瞬間だった。




一夏の恋

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