第12話
「そんな中野やら宮島やら、どうでもいいよ。まあ、単純な人もいるとして、藤ヶ谷は、とりあえず、詐欺師」
「詐欺師っていう言い方が気に入らない…せめて、読めない人って言ってよ」
「読めないって言ったら、空気が読めない人みたいになっちゃうけど、それでもいいの?」
菜月の言葉に、う、と唸る。それも嫌だなあ、散々考えたあげく、出てきたのはずるがしこい、というものだった。これでもだいぶ皮肉めいているような気がするけど…
「その、ずるがしこい藤ヶ谷とは、順調ですか?」
「え、あ、まあ、ぼちぼちかな。バスケで忙しくも楽しい毎日を送ってるみたい。今日は、居残りしないからいっしょに帰ろう、って言ってくれたんだよ」
あたしの言葉に、はいはい、ごちそうさま、って菜月に軽くあしらわれる。バスケが命、といってもおかしくないくらい、バスケがだいすきな彼が、居残りをしないでいっしょに帰ろうなんて言ってくれるなんて、珍しいことなんだよ。月に一度、あるかないか(といっても高校生になって、まだ3ヵ月足らずだけど)。
いっしょに帰る、というのは、学校の最寄駅がいっしょのため、駅で合流して、いっしょに電車に乗る、といった感じ。あたしも高校に入ってから合唱部に入って、たまに遅れたりすると、ほんとうに学校の近くまで来てくれたことがあって、そのときは泣きそうなくらいうれしくなった。
部活の時間、今日は幸せそうだねえ、なんて部活仲間の鳥山先輩に言われる。今日は、彼氏といっしょに帰れる日なんですよ、と言うと、よっぽど彼氏がすきなんだねえ、と微笑まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます