第12話

「そんな中野やら宮島やら、どうでもいいよ。まあ、単純な人もいるとして、藤ヶ谷は、とりあえず、詐欺師」

「詐欺師っていう言い方が気に入らない…せめて、読めない人って言ってよ」

「読めないって言ったら、空気が読めない人みたいになっちゃうけど、それでもいいの?」


菜月の言葉に、う、と唸る。それも嫌だなあ、散々考えたあげく、出てきたのはずるがしこい、というものだった。これでもだいぶ皮肉めいているような気がするけど…




「その、ずるがしこい藤ヶ谷とは、順調ですか?」

「え、あ、まあ、ぼちぼちかな。バスケで忙しくも楽しい毎日を送ってるみたい。今日は、居残りしないからいっしょに帰ろう、って言ってくれたんだよ」


あたしの言葉に、はいはい、ごちそうさま、って菜月に軽くあしらわれる。バスケが命、といってもおかしくないくらい、バスケがだいすきな彼が、居残りをしないでいっしょに帰ろうなんて言ってくれるなんて、珍しいことなんだよ。月に一度、あるかないか(といっても高校生になって、まだ3ヵ月足らずだけど)。


いっしょに帰る、というのは、学校の最寄駅がいっしょのため、駅で合流して、いっしょに電車に乗る、といった感じ。あたしも高校に入ってから合唱部に入って、たまに遅れたりすると、ほんとうに学校の近くまで来てくれたことがあって、そのときは泣きそうなくらいうれしくなった。





部活の時間、今日は幸せそうだねえ、なんて部活仲間の鳥山先輩に言われる。今日は、彼氏といっしょに帰れる日なんですよ、と言うと、よっぽど彼氏がすきなんだねえ、と微笑まれた。

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