ずるいから好きです

第11話

ずるい行為といったら、彼からされる不意打ちのキスだと、あたしは思っている。





はあ、とため息をつく菜月。受験も無事に合格し、華と謳われている女子高生に進級することができた。菜月とは、同じ学校(女子高)で、毎日楽しい生活を送っている。


どうしたの、とため息をついて、なんだか毎日がつまらなそうな菜月に訊くと、彼氏が詐欺師みたいなの、なんて言い出すから、思わず大声をあげてしまった。菜月は慌ててあたしの口を手で塞ぐ。




「や、やめてよ。それに、詐欺師っていうのは、小説のなかでの話なの。勘違いしないでよ」

「な、なんだ。小説のなかでの話か。びっくりした」

一度だけ、菜月の今の彼氏さんには会ったことがあるけれど、とても優しそうな方だった。大人の余裕、というよりは、菜月に尻に敷かれてうれしそう、みたいな雰囲気。


「詐欺師っぽいのは、優莉藍の彼氏だよね」

「え、なんで、誠ちゃんがそうなっちゃうの?」

彼の本来の名をまこと、というのに、せいちゃん、という呼び方をしているのは、彼女の特権だと、あたしは思っている(単に誠って呼び捨てするのにためらいがあったから。逃げである)。



「なんかさ。バスケットやってる人って、読めないよね。単純な人って、少ないっていうかさ」

「そんなこともないよ。中学のときの人でいうなら、中野くんとか、宮島くんとか、単純な人だとおもう」

読めないのは、翼くんとか、誠ちゃん…も、その類に入っちゃうのかな。

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