第6話

「どうするの?もう、終わっちゃうよ?」

小声で希美子にささやかれる。それは、彼女たちの親切を、台無しにしてしまうことになるけれど、これ以上のことはもういいような気がした。


「如月さん、送っていくよ」先ほどねぎらいの言葉をかけた、宮島くんに誘われる。大丈夫だよ、ひとりで帰れるから、と言ったのだけど、女の子ひとりじゃ危ないよ、なんて言われてなかなか引き下がろうとしない。

どうしよう、そう思っていたときに、如月さんは俺が送って行くから、お前は中野と帰れよ、頭上でそんな言葉が聴こえてくる。その声の主は、藤ヶ谷くんのものだった。その言葉に、わかったよ、としぶしぶ中野くんと帰って行く、宮島くん。




「え、あの、藤ヶ谷くん…?」

「俺にあれだけ接してきたくせに、なんでひとりで帰ろうとしてるの?しかも、宮島に誘われたりしてるし…」

辺りを見れば、あたしと藤ヶ谷くん以外に誰もいなかった。しん、としていて、藤ヶ谷くんの声がよく響く。



「俺、勘違いしてたのかな」

「え…?」

「俺に対する接し方に、少し、期待したのに」

藤ヶ谷くんの言葉に、あたしは今まで安定していた心臓が高鳴りだす。どくどく、どくどく、彼に心臓の音が聞こえてしまいそう。

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