第5話

「如月さん、なに飲む?俺、持ってきてあげる」

「え、いいよ。あたしが持ってくるよ。藤ヶ谷くん、なにがいい?」

「あーもう。あたしが持ってきてあげるから」希美子がそう言って、あたしと藤ヶ谷くんの欲しいものを訊いて、部屋から出ていく。希美子も菜月とはちょっと違った、姉御肌。



「ねえ、如月さん。俺、如月さんの歌声、すきなんだ。だからね、歌ってほしいんだ」

「あ、うん…」

そんなうれしいこと、言われるなんて思ってもみなかったから、あたしはなにをしゃべっていいのかわからなくなる。こうやって、彼が素直に話してくれるとは、思ってなかった。もしかして、菜月の言っていた、自分らしく、というのは、こういうことを言うのだろうか。


藤ヶ谷くんにリクエストされ、あたしがいちばん最初に歌うことになった。バスケ部のみんなは、ノリがいいから、歌っていて恥ずかしい、という気にならないですむ。歌い終わって、ふう、と一息つく。藤ヶ谷くんは、さすがだね、と笑って言ってくれた。





「ありがとう。じゃあ、次、藤ヶ谷くんも、歌ってよ」

「え、いいよ。俺、歌、上手くないもん」

「いいじゃん、いいじゃん。あたしといっしょに歌おうよ」

強引に藤ヶ谷くんを誘って、いっしょに歌った。照れながら歌う、藤ヶ谷くんをかわいいなあ、なんて思いながら、あっという間に合コンが終わった。

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