第2話
楽譜の片付けや、戸締りを確認して、あたしたちは学校を後にする。帰る方向がいっしょの希美子と、ふらふら、駅まで、しゃべりながら歩く。
「…にしても、どうして、急に、合コンなんてしようと思ったの?」
「え、優莉藍のために、と思ってセッティングしたんだけど…」
あたしのおとぼけ質問に、希美子は心底驚いたようす。そこまで驚かなくてもいいと思ったけれど、なにも言わないで、彼女の言葉を待つ。「だって、優莉藍、藤ヶ谷くんのこと、すきなんでしょ?」
藤ヶ谷誠くんとは、178センチの長身、3ポイントシューターとして一目置かれている、方なのである。でも、彼には女の噂を聞いたことはない。バスケ以外に、興味はない、そういった雰囲気を醸し出しているからなのかもしれない。
みんなが騒いでいるのは、小林翼くんという、これまた長身の、無口な方。オフェンス力が尋常じゃなく、観客の目を引く、すばらしいプレーヤーではあるけど、あたしは藤ヶ谷くんのほうが、注目すべき人材だと思っている。
「バスケ部との合コンはさ、今週の日曜なんだし、明日、部活が終わってから、ショッピングに行こうよ。あいつらみたいに、おしゃれ、したいでしょ?」
希美子の言葉に、あたしは照れながらも勢いよく頷いた。見ているだけしかできなかったのに、こうやって、近くで彼と接することができるんだ、と思うと、嬉しくなった。だから、明日のショッピング、めぼしいものを見つけて、日曜、がんばっておしゃれしようって、そう思ったんだ。
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