憧れ→好き

第10話

「う~んとね、金管楽器はタンギングをするとき上唇でするんだよ。歯じゃなくて」


「えぇ~…。 む、難しい…!」




部活動紹介のときに、今あたしにこうやって親切に丁寧に教えてくれる先輩に憧れてブラスバンド部に入部した。


…だけど、あたしは楽器なんて触ったこともない、初心者。


楽譜さえも読めなくて、迷惑をかけてばかり。





「そうそう! できるようになったじゃん!」


「ほ、本当ですか?」


「音を聴けばわかるよ。 …その感覚を忘れないでね」


「はい! 頑張ります!」



そう言って先輩はあたしの元から離れ、他の部員のところへ行きいろいろ教えていた。



先輩はとても優しい。


部活の時間がくるのが待ち遠しくて、具合が悪くても学校へ行きたくなる。



“できるようになったじゃん!”


さっきみたいに、先輩に褒めてもらえると、とても心が明るくなるんだ。






「…それ、恋じゃね?」


学校の昼休み、部活仲間の子と昨日の出来事を話していると、そう言われた。



「え…そうなの?」


「そっか…初恋なんだもんね。 叶うといいね」


「…えぇ、どうしよう…!」


「何がどうしようなんだか…」





憧れ→好き



(今すぐ先輩に伝えに行かなきゃ!)

(うん、今すぐ会いに行って告ったら即効でフラれるよ)

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