キス・マーク

第3話

彼は、リビングのソファの上で気持ちよさそうに寝ていた。



「スゥ…」


寝息を立てる彼さえも愛おしい。


そんな彼にグッと近づき、あたしは彼の首筋に紅いシルシをつける。





「………何してんの」


「えっ…きゃっ」


腕を引っ張られ、あたしは彼に押し倒される態勢になる。




「何したの?今。俺に」


「あ、あの…その………は、離して?」


今、彼はあたしの腕をグッと掴んだままの状態。



「嫌って言ったら?」


彼はニヤリと笑ってあたしを困らせる。



「………」


「何も答えられないっていうことは、別に掴んだままでもいいっていうことだろ?」


「ち、ちがっ…」


「お前の望んでることくらい、わかるっつうの」


「いや…んんっ」



彼はあたしの唇を塞ぐ。


息が苦しくなるくらい、ずっとあたしの口を塞ぐ彼。





「ハァ…ハァ…」


唇を離せば、二人とも肩で息をする。



「あ…そうだ。お前…俺の首筋にキスマーク付けただろ」


「え…付けてなっ…んっ…」


彼はあたしの首筋に顔を埋める。



「これはお前がしたことに対してのお仕置きだから。

俺がお前を好きだとか勘違いすんなよ」


「わかってるよ……………




 お兄ちゃん」




あたしがそういうと彼は自分の部屋へと戻っていってしまった。





彼はあたしがキスマークを付けると、それの“お仕置き”としてあたしにキスマークを付け返す。




そうやって彼があたしに彼の“紅いシルシ”をつけてくれるのなら、


―――あたしは一生、彼の首筋に紅いシルシを付けるわ。

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