第8話

「…話したくないことかもしれないけど」


類さんが急に話を切り出してくる。





「どうして、フラれたの?」


「…」


「ごめん、こんなこと云いたくないよな」


「…あたしにも、よくわからないんです」


「…どういう…」


「『急にバイトが入ったから、今日は会えない』って電話がきたんですけど、そのあとに他の女の人と歩いてるのを見ちゃったんですよね」


「…」


「だから…、確実に彼の方からフラれたわけじゃないけれど、あたしは彼の中で二番手で、それも終わりのときがきたんだなって…」


「………茉吏子は、そんな曖昧な終わり方でいいのか?」


「え?」


「そんなもんで片付けられるものなのか?お前は、好きだったから、そいつと付き合ってたんだろ?」


「…」


「二番手なんて、関係ないよ。お前が“本命だ”って、思ってたんだから」


「でも…、今日は、彼のこと、忘れたい」


「…そっか」


「ごめんなさい…」


あたしはせっかくいいこと云ってくれた類さんに申し訳なくて、謝る。

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