第5話

「ちょ、待てよ!」


待てって言われて、誰が待つもんですか。


そう思ってあたしは走り続けた…けど。


やっぱりヒールだったからダメだ。躓いた。




あぁ、顔に傷ができちゃうな。そう思って転ぼうと思ったら、誰かに支えられた。


そのお陰で、怪我をしなくてすんだ。







「っぶね…。お前、ヒール履いてんだから走るなよ」


「…」


あたしを助けたのは、さっきのお節介野郎で。


無意識に、彼のことを突き飛ばした。






「…は?!お前、助けてやったのに突き飛ばすことないだろ」


「誰も助けてって言った覚えはない!」


「転びそうになった女助けるのはジェントルメンの常識だろ」


「…自分のことジェントルメンとか、言ってて恥ずかしくないの?」


「だって、本当のことだろ?本当のこと言って何が悪いんだよ」

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