第37話:シャークキョンシーを倒せ!
「慰安旅行、結局仕事でちたね?」
アネットさんがソファーで俺の膝の上に寝そべりながら語る。
「うん、そうだけどアネットさんは俺の膝の上が定位置なの?」
「主人の膝の上には犬猫がお約束でちゅ♪」
「いや、狼だよね? ついでに女性だよね! 俺、思春期真っただ中だけど!」
「ときめいていただかないと困るので♪」
「レーティングが、レーティングさえなければ!」
思春期男子としては、エロイ事は好きだししたい。
だが、祖母ちゃんにレーティング守れと封印されてるのが辛い。
念願のモン娘メイドハーレムを手に入れたというのに、ぐぬぬ!
くそ、悪の組織め! 俺のストレスを魔力に変えて付けてやる!
それにしても山梨の慰安旅行は、初日で仕事になってしまった。
結局、後始末と書類仕事が出来たので遊びどころではなくなった俺達。
屋敷に戻り、一仕事終えた所で地下基地のラウンジで寛いでいた。
だが、俺はくつろぎの時でも自制心の修行をさせられていた事を思い出す。
俺やメイド達には魔王である祖母ちゃんから、性欲が魔力に変換させられる呪いがかけられている事を聞かされた。
俺が十八歳にならないと解除されないとか、勘弁して欲しい。
こうなりゃ、リビドーを力に変えて悪を討ってやる。
「お坊ちゃま、乗り越えましょうゴールは設定されてるんです!」
「クーネさん、そうだな♪」
クーネさんが俺の傍に来て励ましてくれる。
「まあ、取り敢えずお家で休みましょう」
マミーラさんが指を鳴らすと天井からモニターが降りて来た。
「気晴らしにゾンビ映画でも見ませんこと? こちらは、コーラと私お手製のキャラメルポップコーンですわ♪」
ヴィクトリアさんが食堂から人数分のコーラと、大皿に入ったポップコーンをキャリーワゴンに乗せて運んで来る。
「ゾンビ映画って、鮫映画と同じでバリエーション豊富ですよね?」
「主、私はゾンビを見ると火葬したくなります」
メーアさんとリータさんも来て全員で一つのソファーに座りゾンビ映画を楽しむ。
「やっぱりゾンビは、銃で撃つのが最高でちゅね♪」
「私は刀で斬るのも好きです♪」
アネットさんは銃で倒す派、メーアさんは白兵戦で倒す派だった。
「ミイラをゾンビの同類にされるのは心外です」
「吸血鬼兼フランケンもそれには同意ですわ」
マミーラさんとヴィクトリアさん、アンデッド属性を持つ二人は苦い顔。
「そう言えば、キョンシーはどうなんだろ? あれもゾンビみたいな気がする」
俺はふと、邪仙同盟が使う敵であるキョンシーについて思う。
「あ~~? フランケンみたいなフレッシュゴーレム的なもんとゾンビ型といくつかパターンがありますね?」
クーネさんがコーラを飲みつつ呟く。
「この間のキョンシーレースは、フレッシュゴーレムっぽかったな」
「あれは、ひどかったでちゅね」
「アネットさん、ポップコーン食べさせて?」
「はい、どうぞ♪」
俺達はゾンビを人間達があれこれして倒すアクション映画を楽しんでいた。
世間から見たら俺達の方が、倒される怪物側なんだよなとか思いながら。
何と言うか、もうホラー要素のある映画を普通に見られなくなったな。
「勇太様、ゾンビ鮫人間VS新選組って見ません?」
「ちょ、何その混ざり過ぎなカルトムービー!」
「お坊ちゃま、巨大ゾンビ対ジャイアントメカフランケンもお勧めですわ♪」
メーアさんとヴィクトリアさんが召喚魔法でDVDを取り出す。
「ちょ、二人共何でそんなカルトムービー持ってるのさ!」
趣味がマニアックすぎるだろ、しかし見てみたい。
「このまま今日はお家でカルトム―ビーですね、お坊ちゃま♪」
「いや、クーネさんも皆実はカルト映画好きだったの?」
メイド達がノリノリになったのに驚く。
「ちなみにマッシュルームマンVSゾンビネイビーも面白いでちゅよ♪」
「いや、アネットさんも変なアメコミ映画出さないで!」
俺はkの後、メイド達と怪しげなゾンビ映画鑑賞会をする事になった。
翌日、俺は学校の宿題に訓練に巡回業務にと過ごしていた。
ヒーローは休みを取っていても、事件に巻き込まれて休みが潰れる仕事だ。
ヴィクトリアさんと共に蝙蝠に変身して夜空を飛び、悪を探して空を駆ける。
「キャ~~~! 鮫人間~~~っ!」
絹を裂くような女性の叫びが響き渡る。
「待てい!」
「お待ちなさい!」
「今度は、空から悪魔と金の蝙蝠怪人が!」
俺達は、路地裏で鮫人間と一般人女性の間に割り込む羽目になった。
「ヒーローか、くたばれ!」
鮫人間が文字通り大口を開けて襲って来た。
「汚い口を開くな!」
「私の装甲は、固くてよ!」
俺とゴールデンヴァンパイアの二人は、同時に蹴りで鮫人間を倒す。
吹き飛ばされて倒れたサメの怪人は、煙を上げてキョンシーの服を着た男になり動かなくなった。
「な、鮫人間がキョンシーに変わりましたわ!」
「これはまた、邪仙同盟が何かを企んでいるな?」
対怪人警察に連絡して、俺達が倒したキョンシーを検分してもらう事になった。
後日、俺達の屋敷に桜田刑事が直接訪れた。
この人、夏でもスーツ姿で汗一つかいていない上に冷気が漂っている。
「先日の事件はご苦労さまdした、検分の結果ですが結論から言って仕事の依頼を出させていただきます」
「お受けさせていただきます」
「ありがとうございます、資料はこちらです」
桜田刑事から依頼書と資料を紙で手渡される。
「マジか、また離島かよ」
「普通に海でバカンスがしたいですわね?」
「仕事を片付けたら、海で遊びましょう♪」
「海、良いですねえ♪ 巨大化はしませんけど♪」
「セベック号が修理終わったタイミングで、仕事持って来まちたね?」
俺達は輪になって資料をみながら語る。
お上からの依頼なら断れない、俺達は武装を用意して海へと出るのであった。
「お坊ちゃま、星条旗ビキニでちゅよ♪」
「うん、魅力的だけど呪いが辛い!」
太平洋の上、セベック号の甲板の上で水着姿になってるアネットさん。
普段は抑えられている大きな胸、スポーティーな体付きと星条旗ビキニ。
見られるのは幸せだけど、超幸せだけど! 呪いのせいで楽しみ切れない!
俺の中で、思春期男子のあれこれが沸き上がるたびに魔力に変えられて行く。
「アネット、アホな事してると犠牲者になるのは映画でおなじみだよ?」
「ぐ、クーネは真面目ぶってずるいでちゅ!」
「皆、魔王陛下の呪いのせいで我慢してるんだよ! お坊ちゃまは、ヴィクトリアンメイドこそ嗜好なのさ♪」
「うん、クーネさんが言うようにメイド好きだけどね?」
クーネさんは普段通りのメイド服だ。
「皆様、このストレスを力に変えて悪を討ちましょう!」
ヴィクトリアさんが血涙を流す。
「ええ、そしてあの魔王陛下に大量の曾孫軍団を見せつけてやりましょう!」
メーアさんもぐぬぬと唸る。
「お坊ちゃまが高校卒業されたら、遠慮はなしです!」
マミーラさんも燃えていた、
「皆で幸せになる為に頑張りまちゅよ!」
アネットさんもメイド姿に戻った、取り敢えず今回は邪仙同盟をぶちのめす。
離島で、鮫人間になるキョンシー軍団作っているとかふざけんな!
波が揺れ、巨大な鮫が海から飛び出す!
ご丁寧にキョンシー帽子被った、メガロドンかよ!
「鮫退治だ! モンスターメイドコマンドーズ、ゴー!」
「「イエス、マイロード!」」
変身する俺達。
怒れるモンスター軍団対シャークキョンシーと言う、Z級映画でしかない戦いの火ぶたが切られた。
性欲を魔力に変えてブーストした俺達により、メガロドンは灰になった。
海岸で待ち構えていた鮫人間軍団が襲い掛かる。
「マイロード、封印開放の許可を!」
「承認!」
俺は魔界メイド達に許可する。
ブラッディは巨大な完全狼に、アルケニーはピンクの毒蜘蛛に姿を変えた。
サメ映画とゾンビ映画と怪獣映画が混ざった戦場と化す。
マミーは茶色い巨大コブラ、ゴールデンはの巨大蝙蝠。
アイスドラグネットはラックドラゴンへ。
俺は敵が陣取っている無人島に、モンスター達をけしかける。
「ギャ~~! バケモノ~~~!」
「タ、ダスゲデ~~~!」
「ヘビが~! コウモリが~~!」
島がモンスター達に蹂躙され、阿鼻叫喚の地獄絵図となる。
俺も島へと乗り込めば、這う這うの体で現れたキョンシー姿の男。
「き、貴様はマカイザー! よくも我が島を!」
「喧しい、無人島不法占拠してんじゃねえ!」
「このシャーク道人の、シャークキョンシー計画はまだ終わらん!」
「いいや、俺達が終わらせる!」
シャーク道人と名乗った男が、ハンマーヘッドシャークの怪人へと変身した。
ヒレを振るい、斬撃を飛ばして来るシャーク道人。
「斬撃ならこちらも飛ばせる!」
こちらもサイクロンマカイザーにフォームチェンジ、ロックブーメランを振るい斬撃の飛ばしあいになる。
正月の羽付きの如く斬撃飛ばしのラリーから、空を飛んで襲い来るシャーク道人。
「すり身にしてやる、サイクロンランページ!」
俺はブーメランを持ったまま大回転して竜巻を起こし、シャーク道人を空へと巻き上げつつ竜巻の中でブーメランを振るい敵を切り刻んだ。
倒し終わり着地すると、暴れ終えたメイド達がこちらに帰って来た。
敵を倒した後の夏の空は晴れ晴れとしていた。
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