第36話:富士山噴火作戦を防げ!
アースマカイザーの力を身に着けて戻って来た。
スカラベの臭いは落とすのが大変だったぜ。
屋敷の地下基地にある、中央の茶色い大きく丸いテーブルの四方を四つの白いソファーで囲っただけのラウンジ。
簡易的な休憩所なこの場所で、俺達は紅茶とクッキーを味わい寛いでいた。
そんな心と体の疲れを取っている最中であった。
テーブルの東側のソファーに俺と同席して、俺の膝の上で寝そべっていたアネットさんが突如立ち上がって叫んだ。
「砂漠はしばらく行きたくないでちゅ、森に! 木々や花が香る草原に癒されたいでちゅ! お坊ちゃまが夏休みなんだから、皆で高原と山へ行くでちゅ!」
アネットさんが、山梨へ行こうと福利厚生を叫ぶ。
「私もアネットに賛成、木々に糸貼ってハンモックで昼寝したいです!」
俺と西側のソファーに座っていたクーネさんも立ち上がって続く。
「私も、夏の月夜を飛んでお散歩したいですわ♪」
メーアさんと一緒に北側のソファーのヴィクトリアさんも乗って来た。
「酷い! 皆さん、あっちで岩盤浴や砂風呂も楽しんだじゃないですか!」
南側に座っていたマミーラさんが憤慨する。
「山梨って、地下に涼しい鍾乳洞があるんですよね♪」
メーアさんが興味を示した。
「主、陶芸がしたいです」
俺の中から出て来たリータさんも、要望を出して来た。
「わかった、慰安旅行に行こう♪ けど、予算の方はどうしよう?」
「七村社長から結構いただきましたので、行けますわ♪」
ヴィクトリアさんが笑顔で電卓を使い予算額を弾き出す。
「でも、何で山梨なの?」
「樹海が良い感じに野性を刺激するんでちゅ!」
「ああ、あそこ演習場とかあるしね」
アネットさん、犬科の魔物だからか森とか走りたいんだろうか?
散歩とか付き合おうかな?
「アネットの野性は置いておいて、富士山の周りって悪の組織が大規模な事件を起こしたがるんですよ」
クーネさんが溜息を吐く。
「富士山を爆発させるとか、クラッカー辺りが毎年のように企んでいるそうです」
ヴィクトリアさんが真面目な顔で告げる。
「ハーベストや邪仙同盟も、霊的スポットだとかで狙いますね」
「まあ、アブダクターもあそこら辺には何か怪獣を放ちに来るからな」
マミーラさんの話を聞いて、山中湖での事を思い出す。
富士山の周りは悪の組織の魅力的スポットだった。
「つまり、自然に癒されるのと敵を倒してとストレス発散ですね♪」
「いや、メーアさんは綺麗な顔して何を言うんですか!」
「主、もう乗るしかないですよこのビッグウェーブに」
「リータさんも仕方ないな、じゃあ荷造りお願いします!」
「「イエス、マイロード♪」」
俺が叫ぶと、メイド達は笑顔で支度を開始した。
翌日、戦闘の可能性も考えてモンスタートレーラーに乗り皆で山梨へ。
途中、以前キョンシーレースでお世話になった談合坂のSAで食料とかを買う。
「しかし、このまま普通に慰安旅行で済めばいいよね?」
コンテナでウノをしながらメイド達と語り合う。
「まあ、敵が出たら倒せば良いだけですわ♪」
ヴィクトリアさんが俺に答えつつ札を出す。
「そうですよ、運動です♪」
メーアさんも笑顔だ、この人も馴染んで来たな。
「遊びも仕事も楽しめばいいんですよ、上がりです♪」
マミーラさんがカードを捨て、一番乗りで上がった。
行きは無事にキャンプ場に付けた俺達。
トレーラーで車中泊だ。
「いや~、ヒーロー割引きがあって良かったな」
「涼しいです、素敵♪ お家賃いくらですか?」
「いや、住みたいんかい!」
俺は隣ではしゃぐメーアさんにツッコむ。
メーアさんは氷穴見物を楽しんでいた。
「私は、寒い場所は苦手です~!」
「こうもり洞窟の方が私の好みですわね♪」
マミーラさんは寒がり、ヴィクトリアさんはこうもり洞窟派だった。
「氷穴も良いけど、樹海も楽しそうですよお坊ちゃま~♪」
「クーネに同意でちゅ、森林こそベストスポット!」
クーネさんとアネットさんは、あまりお気に召さなかったようだ。
洞窟を出た俺達は、敵の組織と鉢合わせしない事を願いつつ樹海へと向かった。
「ぷは~~~~♪ 空気が美味いでちゅ~~~♪ ワオ~~~ン♪」
「アネット、あんた女将じゃなくて犬になりかけてるよ?」
「お坊ちゃまには忠実な犬でちゅ、狂犬病の注射も毎年打ってまちゅ!」
「人狼も打ってるんだ、知らなかった」
アネットさんとクーネさんが前衛、俺とマミーラさんが中衛、メーアさんとヴィクトリアさんが後衛。
リータさんは、俺と一体化で中衛と言う隊列で森林の散策を楽しむ。
この隊列なら、索敵能力の高い二人が敵を見つけてくれる。
「ストップ、五百メートル先に金属とバイク用のオイルの臭いでちゅ」
「良し、モンスターメイドコマンドーズ、ゴー!」
「「イエス、マイロード!」」
俺はまずダークマカイザーに変身し、地面に沈み沼のように広がる闇となって仲間達を取り込み音もなく進んで行く。
皆を連れて闇となって進んでみれば、黒い軍服を着た金属の機械の兵隊が二体。
未確認の風穴の入り口に、銃剣月のアサルトライフルで武装し歩哨をしていた。
「む、地面に巨大な影?」
「馬鹿、魔法的存在の敵襲だ!」
機械兵達が影となった俺に銃を向けるも遅かった。
「判断が襲い!」
「はい、ワンキル♪」
俺から飛び出たアネットさんこと、ブラッディウルフが一体を銃撃。
クーネさんことピンクアルケニーがもう一体の背後に回り、糸で首を切ろ落とす。
俺も闇化を解き、魔界メイドに変身を済ませた仲間達と地上に出る。
「よし、この風穴の中へ行こう」
「マントルでも狙ってるんでの?」
「お約束の富士山噴火作戦ですね~?」
ゴールデンヴァンパイアが疑問を抱き、プリンセスマミーが答える。
「このアイスドラグネットのデビューですね、黒波丸の錆にしてやります♪」
全身を黒いスケイルアーマーで覆った騎士。
メーアさんこと、アイスドラグネットが拳を握る。
「ああ、無事にヒーロー免許取った成果を見せてくれ」
「イエス、マイロード♪」
兜にメイドキャップが付いた黒き氷の竜騎士。
格好良いのとシュールさが混ざったアイスドラグネットが俺に敬礼する。
俺はリータさんをガントレットモードで装備。
大地と炎のイフリートアースマカイザーにチェンジ。
風穴内に乗り込むと、中は体育館程の広さに拡張されクラッカーの機械兵達がツルハシで地底を掘削する工事を行っていた。
「侵入者だ、総員作業を止めて戦闘行動に移行せよ!」
「「世界に亀裂と崩壊を、クラッカーに栄光あれ!」」
黒軍服に黄色メットを被った銀のガスマスク顔の機械兵達が、工事道具から剣に装備を変更して襲い来る。
「ブラッディ、爪と鎖で頼む!」
「了解、洞窟は壊さないでちゅ」
俺はブラッディに、銃とかは使わずに倒すように頼む。
敵を倒したら、ここも県の観光資源に変わるだろうし。
「はい、蜘蛛の糸で転びましょうね♪」
「そして地面からの氷柱が刺さりま~す♪」
アルケニーが敵を転がして、ドラグネットが氷柱を生やして止めのコンボ。
戦闘員は百舌の早贄状態になった。
「これ位なら、素手で十分ですわね♪」
「機械も壊れる、呪いの踊りです~~♪」
ゴールデンは、機械兵達の攻撃を弾いてから張り手で粉砕。
マミーがくねくねと怪しい踊りを踊れば、敵も真似して踊り出して頭部から煙を出して回路がショートしたのかお陀仏になる。
「それじゃあ、奥の怪人を倒しに行こうぜ!」
「「イエス、マイロード♪」」
更なる地下へと続く道を、デカいトロッコに乗って走る。
当然ながらゴールには戦闘員と怪人が待ち構えていた。
「良し、飛び降りてトロッコシュートだ!」
「「応っ!!」
俺らはトロッコから飛び降りると同時に、トロッコを敵へ蹴飛ばせば戦闘員達が田倒された。
「おのれ~~~! 貴様らは、マカイザーとモンスターメイドコマンドーズか!」
「その通りだよ、ミスター鉄球マッチョマン♪」
俺は余裕を持って、黒い巨体の鉄球ロボット怪人を煽る。
「ふん、我らの富士山噴火計画を気付いた頭脳は褒めてやる。 だが、貴様らの活躍はそこまでだ! この鉄球監督アイアンボール様が引導を渡してくれる!」
「それだけ上等な頭脳とボディなら、普通に建設業界で働けよ!」
大将同士の一騎打ちだと理解してくれるメイド達は控えていた。
アイアンボールが拳を鉄球に変形させて殴り掛かる。
「リータ、耐えられるな?」
『当然です、主がパンチドランカーになる事もありません』
俺は大地の元素の力を試すべく敢えて受ける。
嘘みたいに痛くないし倒れもしなかった。
「馬鹿な、並のヒーローなら吹き飛ばせる俺の拳を耐えただと?」
「生憎と、仲間達にブースト増し増しで盛り立てて貰ってるんでな!」
させてくれる仲間達の力も借り、お返しは敵の拳を取り捻り倒す小手返しだ。
激しい音を立てて地面を割り敵が倒れる。
「おのれ、まだだ!」
敵も倒れたままではなく、全身を鉄球に変えて転がり襲い来る。
大地の力、イフリートガントレットでの熱を見る力で捉えるべき心を見つける。
「終わりだよ。 大地と炎の合わせ技、マントルマカイザーパンチ!」
足からマグマを汲み上げ、右の拳に炎を灯しての正拳突きで敵を貫く!
「おのれ、自爆もできんとは! クラッカーに栄光あれ!」
アイアンボールは鉄球から人型に戻ると、バラバラになって倒れた。
「悪いな、敵の爆発で洞窟ドカンは洒落にならないんだ」
かくして、俺達は偶然見つけたクラッカーの作戦を潰したのであった。
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