第33話:緊急依頼、飴工場を壊滅せよ!

 風の力を身に着けて戻って来た俺達を意外な人物が待っていた。


 「七村社長? どうしたんですか!」

 「突然の訪問ですまない、娘を助けてくれ!」

 「わかりました、お話を聞かせて下さい」


 屋敷の玄関にいたのは、眼鏡をかけた七三分けに丸めな顔をしたスーツ姿の男性。

 花果先輩のお父さんであり取引先の社長、七村丸人ななむら・まるとさんだった。


 話を聞くと、先輩が学校外で所属している魔法少女チーム。

 その名も、マジカルキューティアが事件の調査中に消息を絶ったとの事。

 他のヒーロー達も協会経由で動いているそうだが、家がすぐに連絡が付き確実に動いてくれるヒーローチームと言う事で来たとの事。


 「頼む、ヒーローならばこう言う事もあると覚悟はしていたが娘達を助けた上で事件解決に協力して欲しい!」

 「よし、悪いが商売抜きでも花果先輩は助けたい。 皆、力を貸してくれ!」

 「「イエス、マイロード♪」」

 「おお! ありがとう、晴間君♪ 報酬はきちんと支払うので、前金はこれで」


 七村社長も喜び小切手で前金を支払って貰った。

 仕事になった以上、先輩達は必ず助けねば。

 色々と難のある性質の俺にも、フランクに接してくれる女子とか守るべき宝だよ。

 部活仲間でオタク仲間。

取引先のご令嬢と言うのは抜きにしても、オタクとして困っている仲間を見捨てるなんてできない。


 「モンスターメイドコマンドーズ、スクランブルだ!」

 「「イエス、マイロード!」」


 かくして、俺達は救出作戦へと出動した。


 「なるほど、花果様は依頼を受けてチームの皆様と離島にあるハーベストの秘密工場を探りに行かれたのですね?」


 現場に向かうセベック号の船室。

 ヴィクトリアさんがタブレットPCで今回の事件について調べている。

 目指すは太平洋上にある東京の離島だ。


 「工場と聞くと、クラッカーも絡んでいそうだな?」

 「そう言う可能性も、ヒーロー協会と対怪人警察は見てるようでちゅね?」

 「人間を飴に変えるとか、邪仙同盟と変わらないエグさです~!」


 俺の呟きにアネットさんと、契約書や領収証などの事務仕事をしているマミーラさんが苦い顔で続く。


 「実は私ら、別件で魔界で出回るヤバイ飴について探ってったんですよ」

 「ハーベストが、人間を飴に変えて魔界にばらまいているそうです」

 「マジか、そんなもん食う魔族が出たら俺達の人魔友好計画がつぶれる!」


 クーネさんとメーアさんの言葉に背筋が凍る。

 俺は、人と魔族の健全な友好関係の構築がしたい。

 邪悪な友好関係なんてもっての外だよ。


 「魔王陛下も、他所の国には注意する位しかできませんし」

 「だよな、政治の面倒くささが痛い」


 魔界は家を含めて七つの罪の王家が遠縁で、それなりに友好関係を結んでる。

 とはいえ、警告以上の事をすると内政干渉だもんな。

 世の中、上の言う事を素直に聞く奴ばかりじゃないのは何処も同じだ。


  魔族に魂まで食われた場合、蘇生どころか転生まで不可能にされかねない。

  食った魔族を倒して、食われた者と魔族の魂を分離するとかすればギリギリで転生なら何とかなるかもしれないレベルだ。

 今回の依頼は魂だけ救っても意味がない。

 ともかく蘇生は困難なので、ベストは食われる前に助け出すしかなかった。


 室内にアラートが鳴り響き、セベック号が幽霊船モードから戦闘モードに変形。


 「ファラオ、目標から敵の飛行魔女部隊が出撃しました!」


 マミーラさんの配下であるミイラ兵が俺に報告する。


 「よし、マミーラさんは残って指揮と事務仕事。 メーアさんは船外でセベック号の守備に!」

 「了解です、ついでに艦砲射撃もしちゃいますよ♪」


 メーアさんがブレスを吐く真似をする。


 「畏まりました、ご武運を~」


 マミーラさんは恨めしそうだった、ごめん。


 変身した俺は、ブラッディウルフ、ピンクアルケニー、ゴールデンヴァンパイアを率いて船から地上へと飛び降り降下。


 持って来たビームライフルで敵の飛行隊からの妨害を切り抜け、工場の屋上へと着地する。

 

 「良し、ゴールデンはそのままパンチ!」

 「はい、人質前の階に下がりま~~す♪」

 「ゴールデン、デパートのエレベーターガールみたいだねえ♪」 

 「いや、腕力による一方通行エレベーターでちゅね?」


 俺達が立つ屋上の床だけを、ゴールデンのパンチで切り取り落下。

 見張りの敵兵がいたとしても圧殺である。


 乗り込んだ部屋は金庫室。

 目の前の金庫の奥から、先輩達の魔力が感じ取れた。


 「金庫破りならお任せでちゅ♪ ワオ~~~ン!」


 ブラッディウルフが超高熱火炎を口から吹いて金庫の戸を焼き切り開ける。


 『にゅわ~~! 皆、助けが来たなり~♪』

 『この人達、噂のモンスターさん?』

 『やった~~♪ 無事な内に助けが来たよ~♪』


 ピンク色のフリルドレスのマジカルハナカ先輩を含めて、赤と青のドレスを着た二人の魔法少女。

 三人の少女達が小人にされた上に、ドレスと同じ色の瓶に封じ込められていた。


 「はいはい、お嬢様方は我ら魔界メイドがお助けいたしますよ」

 「無事でよかったでチュね、ハナカたん♪」

 「ミッションの一つは達成ですわね」


 女性である魔界メイド達に瓶を開封させて助け出す。


 「ありがとうなり、ウルフた~ん♪」

 「え、ブラッディは先輩と仲良いの?」

 「ソシャゲのフレンドでちゅ♪」


 世間は狭いな。


 「ありがとうございました、不思議な気分ですが」

 「そうだね~、良い怪人さんっていたんだ♪」


 赤と青の魔法少女は戸惑っていた、まあ俺達見た目は怪人だからら仕方ない。


 「私らは、こちらのマカイザー様のメイドでございます♪」

 「正義の怪人もいると言う事で、次は事件解決に向かいましょう」


 ゴールデンが余計な事を言おうとしたアルケニーの口を塞ぐ。

 金庫室を抜けて、やっぱりいたクラッカーの機械戦闘員達を倒しながらボスの素へと進む。


 「あれはフェザーキングですな、外でクラッカーの巨大怪人とロボ戦ですぞ♪」

 「いや先輩、仕事中っすよ?」

 「むう、仲良いですわねマイロード?」

 「友達レベルだから問題なしでちゅ♪」

 「私らのマイロードは、モンスター娘ラブだもんね♪」

 「いや、良いから! 赤と青の人ドン引きしてるから!」

 「私もマモナーなりよ♪」

 「いや、ツッコミが追いつかないから止めて!」


 ボス戦前だと言うのに、ぐだぐだな脱出劇を繰り広げる俺達。

 自由の身になれば、キューティアの面々も炎や氷の魔法で敵兵を倒すと活躍。


 「ここは研究棟なり、地下にボスの工房がありますぞ! マカイザー殿!」

 「ええ、魔力がヤバいっす」

 「マカイザー殿、魔族化されたなりか?」

 「ノーコメントっす」


 ヤベえ、この先輩勘が鋭い。

 俺達は病院と学校を混ぜたような白い建物内を敵の魔力を辿って走る。

 階段を降りて地下階奥の鉄の扉を蹴り破って殴り込む。


 部屋の中は広く、デカいシリンダーに化け物が漬けられていたりするヤバい理科室だった。


 「おや、くそガキどもが来たね?」

 「喧しい、マッドサイエンティストもどきの魔女め! 覚悟しろ!」


 部屋の奥で白衣を着た白髪の老女がこちらを見る。


 「はん! 私は究極の魔法のキャンディを作っていただけさ♪ 空間開放!」


 老女が叫び、巨大な飴玉が沢山ついた白いドレス姿に変わる。

 怪しい理科室だった部屋も、広大なとローマの闘技場もどきに変化した。


 「我が名は大魔女、サルミアッキーナ! くたばれヒーロー共!」


 サルミアッキーナが闘技場の中央で両腕を広げて叫び、黒い上に薬臭い人型ゴーレム達を召喚した。


 「ぐわっ! こいつらサルミアッキのゴーレムかよ!」

 「け~っけっけ♪ サルミアッキの良さがわからない奴らは死にな!」


 サルミアッキゴーレムが迫る上に、魔女自身が掌からサルミアッキの弾幕を放つ。

 魔女の弾幕はゴールデンが盾となって庇ってくれた。

 キューティアの三人はダウンしている、狡い!


 「こうなったら、封印開放でちゅ!」

 「もうやるしかないね!」

 「良し、魔女は俺が倒す! ゴールデンは三人の護衛を!」


 ブラッディとアルケニーが狼と蜘蛛の魔獣となりゴーレムの相手をする。


 俺はダークマカイザーとなり魔女へと突っ込んだ。


 「薬臭いんだよ、くたばれ! ダークブレイズパンチ!」

 「げげっ! サルミアッキシールドが破られた!」


 俺の紫色の魔王の炎が灯った拳を、魔女はサルミアッキと魔力で作った丸い盾で防ぐが盾を砕いて殴り飛ばした。


 「フィジカルは弱いな、エンブレムプレッシャー!」


 俺は光り輝く王家の紋章を空中に生みだし、魔女へと落とした。


 「うぎゃ~~~っ!」


 魔女は紋章に押しつぶされて爆散して消えた。


 「これにて一件落着だな、後の事は他のヒーローに任せよう」


 メイド達も空間も元に戻り、俺はキューティアの三人をメイド達に背負わせて皆で脱出したのであった。

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