第31話:ハッピーバースデー魔族化♪
「やべえ、何か角が戻らねえ! 耳も尖ってて、足が毛むくじゃらだよ!」
『坊ちゃん、そりゃ角も尻尾もあんたの体なんだから戻らねえさ♪』
「いや、流石に角出して街歩けねえよ?」
『何でだ、黒くて立派な角だぜ? 魔族にモテモテだよ~♪』
「写真撮り直しとか、通行人怪我させないようにとか面銅じゃん!」
『いや、マジメか!』
「真面目に生きるって、大事だよ!」
福生で邪仙同盟の銀角道人との戦闘。
ダークマカイザーに目覚めてピンチを乗り切ったのは良かった。
友人達からも新フォームおめでとうと祝われた、それは嬉しい。
けど、変身を解いたら変身してたってどういう事?
こう言うのって、テレビとかだと一時的な限定フォームじゃね?
『坊ちゃん、現実はフィクションにょりもドラマチックだぜ♪』
「上手い事言えと! くそ、どうにかして人の姿に戻らねえと日常生活がヤバい」
『良いじゃねえか、人と魔族どっちも自分なんだろ♪』
「メイド達の目がヤバい、俺達日本のヒーローは世界の平和に加えてレーティングも守らないといけないんだよ!」
変身を解いて自室で人間七割、黒山羊三割の姿で焦る。
今の俺は変身ベルト付けたギリシャ神話の牧神パンか、サテュロスの姿だった。
「お坊ちゃま~~~~♪ ぐへっへへっへ♪」
「クーネさん、服どうしよう?」
「……素敵、好きピ♪ あらあら、セクシーなお姿になられて♪」
「目が怖い! 背中から蜘蛛の腕出してうごめかさないで!」
「他の皆も同じような反応をしますよ♪」
「魔族の美的感覚がわからない」
「このクーネ、プロですからお召し物はすぐにご用意いたします!」
「鼻血出した顔で説得力がないよ!」
取り敢えず、普段着のパーカーとストレッチパンツに着替えはできた。
「お、おはようございますお坊ちゃま♪」
マミーラさんに会うと頬を染められた。
「ちょ、お坊ちゃまが私達サイドに来てまちゅ!」
「素敵な殿方になられましたね、勇太様♪」
「主、イケ魔族ですよ♪」
「はわ、ご褒美でございますか!」
「ぎゃ~~~っ! ヴィクトリアさんは吸血鬼が鼻血出すなよ!」
家の中にいてもパニックだった。
「勇太、魔族化おめでとう♪ 今夜はハンバーグとお赤飯よ♪」
「祖母ちゃん、人間変身の魔法の教本とか頂戴?」
「え~~~? 良いじゃない、バズるわよ♪」
「ヒーローとしては、変身前は目立たない方が動きやすいんだよ」
「魔族は好きなんでしょ。服着て靴を履けばオッケーよ♪」
「いや、怪人扱いで通報されるよ!」
「人間社会て、昔から面銅よね~~?」
「うん、そう言う感覚も差を埋めて行けって事だね魔王として」
食卓にて、自分のように角丸出しな祖母とメイド達と魔界マグロの漬け丼やサンダーベヒモスのサラダで朝食を摂取する。
いや、シュールすぎるわ。
「もしかして、母さんも変身するの?」
「そうね、あの子も良い角してるのよ?」
「角が萌えポイントなんだ俺達?」
「刺さるらしいのよ、角だけに♪」
「いや、笑いのポイントも独自だね?」
魔族文化、よくわからない。
「まあ、メイド達が浮ついているとあんたも大変だろうからね」
「うん、オンとオフの切り替えはしたい」
「まあ、あんたは人間の割合が多いから人間変身も楽でしょ」
「もしかして、母さんが俺を魔界で育てなかったのはこういう時の為かな?」
「そう言う一面もあるかもね、頭の中でヒューマンシフトって念じなさい♪」
「ああ、ヒューマンシフト! ぐわっ! 頭痛が!」
角が高速で頭の中に収納されて行く感覚が痛い、まあこれは馴れだな。
「ああ! 萌えポイントが隠された~~~!」
「お坊ちゃま、恥ずかしがらないで下さいませ!」
「勇太様、ありのままの自分って最高ですよ!」
「課金すれば、いくら黄金を課金すれば良いのですか?」
「お坊ちゃまの魔族姿をもっと見たいでちゅ!」
「主、素敵ポイントは出して行きましょう」
メイド達から不満の声が上がる。
「いや、普段の俺はどう見られてたんだ?」
魔族の姿で大興奮されるなら、人間時の俺はどう思われてたんだ。
「人間モードのお坊ちゃまも、可愛らしくて好ましいですわ♪」
ヴィクトリアさんの言葉にメイド達が頷く。
「魔族モードはワイルドな素敵さが常時出てます♪」
魔界のワイルド代表のメーアさんがうっとりしながら告げる。
「人間だと魔族に対するメガプレイボーイ、魔族モードだとあらゆる魔族が惚れるテラプレイボーイでちゅ!」
「いや、ギガ越えてテラかよ!」
アネットさんの言葉にツッコむ、俺はどんだけ魔族特攻なんだよ?
魔族の娘に対するインキュバスなのか俺は?
「ほらね、こうなるから勇太を魔界で育てるのを止めたのよ」
「英断だと思います」
人間化することでメイド達を落ち着ける事には成功した。
レーティングを守る為にも、魔族化は迂闊にできないな。
「ですが、私達の愛と忠誠心は爆上げです♪」
「私達の好感度のゲージが限界突破ですよ♪」
「いや、マミーラさんとクーネさんはよだれたらさないで?」
メイド達全員の俺を見る目が、獲物を狙う獣の目になった。
嬉しいけれどレーティングが危ない。
「勇太が高校卒業するまでレーティング越えるのはお預けだからね、あんた達?」
「「イエス、マイクイーン!」」
「世界の平和とレーティングを守りながら恋愛しなさいね?」
祖母ちゃんが俺でもヤベえと感じる魔力の圧をメイド達にかけて大人しくさせた。
「勇太、あんたも自分を律する力を身に着けなさい」
「あ、はい。 わかりました」
「まったく、多分私のジジイ辺りからの隔世遺伝にも困ったもんだわ」
祖母ちゃんが溜息を吐く、魔界で何したの母方のご先祖?
騒がしい朝食を終えて基地へ学校は休みだが、ヒーロー活動に休みはない。
「福生での瓢箪事件、どうにか市民に死傷者は出なかったようですわ」
「他のヒーロー達が間に合わなかったら、ヤバかったぜ」
ヴィクトリアさんの報告に安堵する。
「いや、お坊ちゃまが命懸けで頑張ってくれたからですよ!」
クーネさんが叫ぶ、まあ死にかけたしな。
「そうでちゅ、あの邪仙が元気なままだったら私達も酒に変えられてたでちゅ!」
「改めて、邪仙達の術もエグイなと感じられました~~」
アネットさんと、マミーラさんも続いて声を上げる。
「主こそ真のMVPです」
リータさんが胸を張る。
「ありがとう、敵も魔族対策してるってわかったのは収穫だよ」
銀角道人、次に出て来たらキッチリと倒さないと。
「邪仙とはいえ、妖怪退治とかする仙人の一派ですからね」
「邪仙同盟、悪の退魔組織って言えるのが面倒だな俺らには」
正義の魔族と悪の退魔組織、逆じゃね普通?
「何にせよ、何処の悪の組織も要注意です」
「他の悪の組織もまだ上には上がいるだろうしな」
幹部級の悪党はそれなりに手強いと言うのもわかった。
戦闘経験を積めたのもある意味ではパワーアップかな?
報酬の振り込みなども確認して、俺達の福生瓢箪事件はキッチリ終わった。
「さて、次はグリーンロックていうモンスターを狩りに行こうか?」
「ええ、バロックバットの強化ですわ♪」
「風属性なら、サイクロンマカイザーでしょうか♪」
「タイフーンとかハリケーンとかゲイルとかもあるよ、風なら♪」
「トルネードとかもありでちゅね?」
「きっと、緑色のフォームですよ風なら♪」
一つの事件が終われば、仲間達と次の予定の話題に花が咲く。
次に獲得を目指すのは四大元素のひとつ、風属性。
「サイクロンかな、その中だと?」
発音が伸びる言葉は、フォーム名よりは技名の方がしっくりくる。
俺達の次の予定は、魔界に行ってモンスター狩りだ。
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