第30話:闇の力、ダークマカイザー誕生

 「ここの所の戦い調子良いわね、勇太♪」

 「メイド達のお陰だよ、助られてばかりだ」

 「悪魔の力は怖い?

 「うん、怖い。 だって俺、根っ子はボンクラだもん。 けど、欲しい未来とか掴みたい物が出来たから自分の血と力からは逃げない」

 「堂々と、矛盾した事言うわねえ?」

 「ごめん、けど嘘はないよ」


 夏休みに入り、屋敷の食卓で祖母ちゃんと向き合い話し合う。


 「あんた、魔族の事は好き? 私らみんな化け物よ?」

 「好き、俺だって化け物の孫だぜ? ていうか、人間も化け物の一種だよ」

 「言うわねえ、懐かしい♪ 人間も好き?」

 「ああ、どっちも好きだよ。 どっちも手放したくない、全部欲しい」

 「うんうん、良い色欲で強欲で傲慢ね♪ で、あんたより強い奴が邪魔するならどうしたい?」

 「そんなのが出たら、正直に言えば妬ましいしぶっ飛ばしたい。 その為の力が欲しい、魔界メシでも力になるなら不味いのも食うよ?」

 「嫉妬、憤怒、暴食、ところで勇太は、七つの大罪って知ってる?」

 「罪でも良いよ、色んな人達に迷惑かけて行くけれど進んで行く」

 「良し、流石は私達の孫ね♪ その罪、認めるわ♪」

 「ありがとう、祖母ちゃん」

 「ばっちゃのクエストは、これから難易度上がて行くわよ? 覚悟は良い♪」

 「おっかないし面倒だけど、前に進むよメイド達も巻き添えにして」

 「はい、怠惰の罪も良し。 メンタルの面談は合格♪ 段々、家の魔王子らしくなって来てるわね♪ バックルもそう思うでしょ?」


 祖母ちゃんから合格を貰った気構えとかメンタル的なもんは良いらしい。

 何か、突然変身ベルトが服の上から浮き上がった。


 『魔王様、今の坊ちゃんなら闇の力のロック解除をしても良さそうですぜ?』

 「そうね、特訓メニューも考えておくわ♪」

 「ヤベえ気配がするけど、逃げないで受けるよ」

 『流石坊ちゃん、ビビりでボンクラだけどここぞと言う時のやる気はあるぜ♪』

 「ヒーロー学校で、格好良い奴らと出会ったからかな?」

 「あの学校、良い所ね進三郎も卒業したのよ?」

「祖父ちゃん、OBだったのかよ!」

「ええ、懐かしいわ。 うん、どら焼うまうま♪」


 祖母ちゃんが思い出にひたりながらテーブルの上の皿に入ったどら焼きを、暴食の魔王の如くバクバクと全部食い終えて笑う。

 いや、それ食い過ぎじゃね? 俺の分はないの?

 何か良い雰囲気が台無しだよ? 呑気にお茶もすすってるけどさ?


 「ん? おやつなら後で用意するわよ?」

 「いや、それはそれでおいておいてさ?」

 「まあ特訓も楽しみにしてなさいよ♪ それよりも、メイド達があんたに飢えてるから散歩にでも連れて行ってやりなさい♪」

 「いや、メイドは犬じゃないんだからさ狼はいるけど」

 「ばっちゃはこれからお祖父ちゃんとデートに行くから、あんたもあいつらとデートして来なさいな。 ほれ、特別にお小遣いの二万円♪」

 「いや、気前良いな? でもありがとう祖母ちゃん!」

 「はっはっは、今迄お年玉とかあげてなかったからね♪」


 祖母ちゃんから支給された小遣いを手に席を立ち、俺は地下の基地へと向かった。


 「やっと来てくれまちた~♪」

 「いや~、魔王様との面談はいかがでした?」

 「夏ですわ、恋の季節ですわ♪」

 「鳥取砂丘でピラミッドを建てましょう♪」

 「主、バーベキューとキャンプファイヤーをしましょう」

 「いやいや、海ですよ海♪ 水着でバカンスですよ♪」

 「いや、予算ないからな? 水着メイドは邪道だよ」


 群がられる俺、メイド服はヴィクトリアンだ。

 次の元素の力は闇に決まった事を告げる。


 「まあ、闇属性は魔族の基本ですから納得ですわね」


 ヴィクトリアさんは少し不満気だ。


 「バロックバットの強化形態を後回しにされたのが、少し不満ですの」

 「ヴィクトリアと相性が良いのは風の属性なんですよ」


 クーネさんが解説してくれる、申し訳ない。


 「じゃあ、闇の次は風にしよう。 どんなモンスターを相手にすれば良いかな?」

 「風なら、グリーンロックと言う大きな鳥が良いと思います」


 マミーラさんがモンスター図鑑を開いてみせる。


 「あ、この鳥! 昔見かけて、食べ損ねたんですよね~♪」

 「メーアさん、こいつ食えるの?」

 「はい、捌いて食べましょう」

 「煮るのも焼くのも揚げるのも燻製も、お任せ下さい主」

 「リータさんは、武具だよね? 調理器具化してないか?」

 「冷やすのなら私、温めはリータさんですね」


 仲間の能力が生活にもお役立ちしていた。


 「そういや、メーアさんのヒーロー免許も行かないとな」

 「勇太様、私はか弱い細腕の手弱女なのでエスコートをお願いいたします♪」

 「まあ、他の人達の安全の為に付き合うよ」


 ブラックドラゴンは細腕とは言わない。

 皆でどこかへ出かけようかと言い出した時、アラートが鳴り響いた。


 「マジか、現場は何処だ!」


 俺の叫びに応じて虚空に水晶玉が出現し、スクリーンを生みだして映像を見せる。


 『ひゃっは~~~♪ 吸い込め~♪』

 『大変です、邪仙同盟らしき怪人が市民を次々と瓢箪に吸い込んでます!』


 福生駅のビルの上で、空の上に無数の巨大瓢箪を浮かべて人々を瓢箪へと吸い込んでいる白髪に青肌で黒い道服を着た男の邪仙の姿が放送されていた。


 「うげ! あれって、西遊記の瓢箪か?」


 絵本で見たが、金角銀角コンビが使ってた奴だ。


 「閉じ込めた生き物を酒に変えるガチヤバアイテムでちゅ!」

 「皆、スクランブルだ!」

 「「応っ!!」」


 遊びに行く候補の街が大惨事とあれば無視できねえ。

 セベック号で空から向かう。


 「やや、あれは忌まわしい正義の味方気取りの魔族共! 吸い込め!」


 現場上空に来たら、早速瓢箪の一つに狙われる。


 「マイロード、お許しを!」

 「いや、皆~~~っ!」


 俺は仲間達に船から落とされる事で庇われた。


 「くそ、皆も助けないとって、変身が解けてる!」

 『坊ちゃん、あの瓢箪空間を遮断してるみたいだ!』

 「マジか、リンク切れかよ仕方ねえ!」


 自分の魔族パワーだけとかピンチだけど、やるしかねえ。


 「見つけたぞ魔族使い! 死ねい!」

 「ふざけんな! 魔王の炎パンチ!」


 こちらに来た邪仙に、紫の魔王の炎を纏わせたパンチで殴りかかる。


 「ぐはっ! 使役者本人も戦える口か!」


 相手の着ている服の力か焼き殺せなかったが、殴り飛ばせた。


 「畜生、街の人達も仲間も返せ!」

 「そうはいかん、人間酒は極上のシノギよ♪」

 「ふざけんな、黒波丸っ! ……がはっ!」


 黒波丸を召喚して手に持ったら鼻血が出た。


 「魔力不足だな、せりゃ!」

 『坊ちゃん!』


 邪仙の蹴りを黒波丸で受けるが、蹴り飛ばされた時に武器は送還されて消える。


 「ぐおっ! ……ててて、くそったれ!」


 敵の攻撃のダメージは軽減できてるが、魔力不足が辛い。


 「がっはっは、並の怪人なら倒せただろうが下級幹部の我には及ばぬよだなあ♪」

 「ぶは! ふざけんな、俺が皆を助けてお前を倒すんだよ!」


 鼻だけでなく、口からも血を吐き魔王の炎を出して構える。


 『坊ちゃん、今こそ次の覚醒の時だ!』

 「そうはさせん、銀銭劍を喰らえ!」

 『ヤバイ、聖なる力の攻撃だ! 避けろ坊ちゃん!』


 邪仙が銀の貨幣で作った剣を散り出して踏み込み、俺の胸を突き刺す。

 「ぎゃあああああっ!」

 「やったか?」

 『坊ちゃん!』


 強烈な激痛、だがそれが俺に文字通り火を付けた!


 「ふざけんな!」

 

 怒りが爆発し、邪仙を突き飛ばし俺の全身を炎が包む


 「ぐわっ! 貴様、魔族か!」

 「知るか、両方だよ!」

 『坊ちゃん、立派な角と尻尾だぜ♪ 俺もすっかり黒カボチャだ♪』

 「げっ! 俺、裸ベルトのマッパじゃん! って、下半身が黒山羊だよ!」

 『大丈夫、大事な所は炎で隠れてる♪』


 どうやら俺は、魔族化したらしい。

 多分、今の見た目サテュロスみたいなんだろうな?


 『ほらほら、敵が混乱してる内に変身しろよ♪』

 「ああ、魔界チェンジ!」


 今度は俺の全身を黒い炎が包み込む。


 「ダークマカイザー、お返しの時間だ♪」

 「く、おのれ! 我が名は銀角道人、覚悟せよ化け物っ!」

 「いや、人々を苦しめて街を荒らすお前の方が化け物だろ!」


 さっきまでと違い、新スーツを着てすこぶる調子がいい。

 剣を構えて突っ込んで来た相手にこちらも突っこんで殴り武器を砕く。


 「魔族なのに聖なる力が効かないだと?」

 「うるせえ、神様も俺の方が正しいって味方してくれてるんだよ!」

 「黙れ、黒山羊男!」

 「ダークマカイザーだ、覚えてあの世で裁かれろ!」

 「ぐはっ!」


 邪仙に魔王の炎が灯った右足でハイキック。

 相手は腕でガードするもよろめいて倒れる。


 『坊ちゃん、行けるぜ♪』

 「いや、街の人達と皆を助ける方が大事だ!」


 俺は天高く飛び上がり、仲間を捕えた瓢箪に蹴りで穴を開ける。

 仲間達をが乗るセベック号が外へと出てきた。

 デカい糸球は人々を保護したんだろう。


 「よし、皆は無事だなってヤバイ!」

 

 しまった、術者が気絶したから瓢箪が落ちちまう!


 『瓢箪は俺達に任せろ♪』

 「え、そのロボはフェザーレッド達か?」

 『遅れてすまない!』

 「おお、イオーロも来てくれた♪」


 助ける人質が多すぎると思った矢先、友人知人を含めたヒーロー達が間に合った。

 彼らが落下し空けた瓢箪を受け止めて安全に着地させ、人々を開放して行く。

 銀閣道人は逃げていたが、俺達とヒーローの連携で事件は解決したのであった。

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