第29話:バスジャックを解決せよ!
「元素の力も、三つ揃ったな」
「残るは、風と大地と闇ですわね?」
教師役のヴィクトリアさんが首をかしげて呟く。
「闇は、お坊ちゃま自身が魔王パワーがもっと強まれば自然と至るはずでちゅ」
「でも、その頃にはさらにメイドが増えてそうなんだよね?」
俺の左右を固めるように座るアネットさんとクーネさんが口を開く。
「お坊ちゃまはモン娘たらしですからね~~?」
「はい、たらしこまれております」
「右に同じです♪ ああ、愛おしい♪」
後ろの席のマミーラさん、リータさん、メーアさんがひどい。
「いや、流石にこれ以上増えないはずだよ? きっと、多分?」
「魔王様が、モンスター娘にならない相手を選んでくれればですかね?」
クーネさんがジト目で見つめる。
期末も無事に終わり、学校は後は夏休みと言うある日。
地下基地の講義室で、メイド達に監視されながらしている中での会話。
試験一週間前に水の力をメーアさんごと手に入れて三つの属性を得た。
残り三つで元素の力はコンプリートできる。
どんな敵を相手にするにしても手数はあった方が良い。
できればモンスター娘のメイドさんももう少しいても良いかも?
「まあ、私は海の如く広く深いので増えても受け止めます♪」
「メーアさん、アピールが美味いですね焼けてしまいます」
「火気厳禁ですよ~?」
後ろの席の三人は不穏だ。
しかし、何だかんだで彼女達が軽口を言い合える仲になっているのは良い事だ。
「むむ、何をほっこりしたお顔してるんでちゅか?」
「そうですよ~? もっと私らも大事にしてくださいね?」
「いや、皆はありがとうマジで!」
アネットさんとクーネさんに釘を刺される。
「感謝ではなく寵愛と魔力をいただきとうございます♪」
「いや、ヴィクトリアさんは牙を出さないでくれませんかね?」
ヴィクトリアさんが牙を見せて微笑む、ヤベえ魔眼使ってやがる。
俺は苦直した、何で俺に味方のデバフ魔法が来るのさ!
「久しぶりに、直接エナジーをいただきましょう♪」
「大丈夫ですよ、私らのエナジーも注ぎますから♪」
「美味しくいただけるんですね、興味深いです♪」
「主、お覚悟を」
「いや、せめて順番を決めてからで頼む!」
ホラー映画の被害者の如く、俺はメイド達に迫られる。
俺はメイド達に順番に差し出した人差し指からエナジードレインをされた。
「「美味しゅうございました♪」」
「お粗末さまでした」
俺とメイド達の儀式は終わった。
俺に愛情と力をくれる彼女達の為に、これからも頑張らねば。
「お坊ちゃま、何か燃えてまちゅね?」
「何となく、私らへの愛情を感じるから良いじゃない♪」
「ええ、私達の事を思っていただけているのは間違いありませんわね」
「でも、その思いを口に出して貰っても良いと思いますよ?」
「主の気持ちを知りたいです」
「夫婦になるのですから、お教え願いますか?」
何か皆に勘付かれた。
俺は席を立ち、ホワイトボードの前に出る。
「いや、皆と楽しく暮らせる世界にしたいんだ」
「私達、今でも楽しいでちゅけれど?」
「ちなみに、具体的にどんな世界でしょ?」
「魔族がもう少し、普通に人間と家族や恋人友人付き合いができる世界」
アネットさんとクーネさんに言われ、ペンでホワイトボードに書きながら答える。
「確かに、私達は地球では人間化が必須ですしね」
「戦闘形態になると、怪人扱いです~~~」
ヴィクトリアさんとマミーラさんが続く。
「主の願う世界、楽しそうですね」
「私も、ドラゴンの姿で思い切り地球の海を駆け回りたいですね」
「いや、メーアさんは自重して! あの姿だと怪獣扱いだから!」
「え、私がオチですか!」
地球の魚とか乱獲されかねない、環境破壊とかになる。
他の怪獣とかに何かされるのも嫌だ。
「まあ、メーアみたく魔族の姿だと生活に難があるのもいますからね」
「双方の歩み寄りとすり合わせが大事でチュね、マジで」
「改革は、時間をかけて行きましょ~~」
「まずは、ヒーロー活動で地球へのイメージアップですわね」
「主の夢、お供します」
「ちょっと、私をオチにしないで下さいませんか?」
メーアさんが可愛くむくれた、がっははと笑てた時と大違いだよ。
「まあ、夏だし海は行きたいな地球でも魔界でも」
「山も良いでちゅ♪」
「そうだな、色々できる夏にしたいぜ♪」
俺が呟くと同時に、室内にアラートが鳴り響く。
「だ~~~~! 私らとお坊ちゃまの夏休み計画会議が!」
クーネさんが怒りに吠える。
「許せません、鳥取砂丘へお誘いしたかったのに!」
マミーラさんも私怨で怒る。
「今回は何処の悪の組織でちゅか~~~!」
アネットさんも機嫌が悪くなり走り出す。
「それでは、懲らしめてやりましょう」
「ああ、俺達と皆の平和を守るんだ!」
「主、中に入りますね」
メーアさんもリータさんも連れて全員で出動。
久しぶりにモンスタートレーラーに乗り込んで、秘密の通路から発進。
「今回の敵は、忌々しいハーベストの魔女共ですわ!」
ヴィクトリアさんがタブレットPCを見ながら語る。
世間の迷惑にならぬよう、妖怪達が運営する異次元ハイウェイを爆走しつつ車内で作戦会議を開く。
「敵は遠足に向かう幼稚園のバスを略奪、八王子城山方面へ移動中か」
「先回りして迎え撃ちましょう!」
「腕が鳴りますね♪」
メーアさんは腕を振るい過ぎないで欲しい。
俺達の車両は現実空間のだだっ広い平原に飛び出した。
「っげ~~~~! 貴様らはマカイザーとその一味!」
性格の悪そうな黒ローブの魔女の婆さんが、急ブレーキで止まり降りて来る。
いや、人質放置するの? とか思ったが、俺達に勝つ自信があるんだろう。
「ベテラン魔女を舐めんじゃないよ、出でよデビル戦闘員!」
魔女が地面に赤い魔法陣を描くと、陣の中からワラワラと虫歯菌みたいな槍で武装した魔界の輩らしい戦闘員達が出て来た。
「雑魚ですね? マイロード、下知を!」
「モンスターメイドコマンドーズ、ゴー!」
「「イエス、マイロード!」」
白昼堂々青空の下で、戦闘開始。
「ヒャッハ~~♪ ベヒモスランスでポールダ~~ンス♪」
ピンクアルケニーがランスを地面に突き立てて柱にし、見事な旋風脚を振るう。
「リータ、火力マシマシで行くでちゅ!」
イフリートガントレットを装備したブラッディウルフが炎の拳で殴り倒す。
「さあ、北の海風で凍り付きなさい!」
メーアさん、まだヒーロー免許ないのでヒーローネームなしが龍人形態で冷気を吹き付けて戦闘員達を凍らせて砕く。
「マミーさんは子供達の呪いの解除を、私は元の場所まで運びますわ♪」
「お任せを~~~♪」
プリンセスマミーがバスの中に入れば。ゴールデンヴァンパイアはバスを持ち上げて空を飛んで行く。
「しまった! 生贄が連れて行かれちまったよ!」
「俺達を舐めるな!」
白い陣羽織を羽織ったブリザードマカイザーになった俺は、黒波丸を振るい魔女と戦う。
魔女の方も、老女の見た目とは思えぬパワーで箒を武器に鍔ぜり合う。
「おのれ小癪な、薔薇の魔女ローゼリナ様の真の実力を見せてやる!」
距離を取ったローゼリナは、二十代の黒髪美女に若返り紫の薔薇の棘の鎧を纏う。
「どうだい? 綺麗なお姉さまに殺されちまいな!」
「悪いな、モンスター娘メイド以外は身も心も受け付けないんだ!」
「くたばれ、魔物狂いの変態!」
茨で巨大なメイスを作り振るうローゼリナ、事実だがくたばるわけにはいかない。
振るわれたメイスによる攻撃をバックステップで回避する。
「断る、マカイザーブリザード!」
俺は胸から猛烈な吹雪を竜巻状に放出する。
「ば、馬鹿な! 私の魔力の薔薇が凍るなんて!」
「こちらの魔力が上ならできる、アイシクルウェ~~~ブ!」
敵を吹雪で武器ごと凍らせ、黒波丸を振るうと同時に冷気を纏った斬撃を飛ばす。
薔薇がバラバラとは誰が最初に思いついたのか?
俺の必殺技により、。ローゼリナは木っ端微塵となった。
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