第28話:ドラゴンと水の力、ブリザードセベクフォーム

 「またメイドが増えたでちゅ!」


 アネットさんはガルガルと吠えた。


 「お坊ちゃまの、モン娘たらし!」


 クーネさんの言葉には、否定できない。


 「まさか、リータさんに続いて新たなメイドが増えるとは?」


 ヴィクトリアさんは、ドラゴン娘を見て溜息。


 「確かに、水の力を手に入れたとは言えますが~~?」


 マミーラさんも不満気だ。


 「主、あなたは色欲王の末裔とはいえ節操と言う物はないのでしょうか?」


 リータさん、ないわけじゃないんだよ。

 人間には手出しはしてないし。


 「気にするな我が夫よ、我はメイド達も受け入れるぞ♪」


 ブラックシードラゴンは豪快に笑う。


 セベック号にブラックシードラゴンを連れて戻ったら、やはり揉めた。

 いや、俺だってまさか二度もモンスターがモンスター娘になるとは。

 魔力与えたっけ? と、思い出して攻撃が魔力を与えた扱いかと思い至る。

 これからは、迂闊に雌の魔物やモンスター娘は攻撃できないな。


 「おっと、名乗りが遅れたな♪ 我が名は今よりメーアだ♪」


 ドラゴン娘ことメーアさんが名乗った。


 「それでは勇太よ、そなたに我が力を与えよう♪」

 「えっと、どういう方法で?」

 「人の世ではドラゴンの血を浴びて英雄となった者がいる、ほれ♪」

 「え、ちょっと待て!」


 メーアさんは自分の刃で人差し指を噛み、その指を俺の口へと当てた。

 いや、血が生き物みたいに俺の口に入って来る。

 熱い、体に熱と力が流れ込みバキバキと骨や血肉を作り替えていくのがわかる。


 「はわ! お坊ちゃまが全身い黒い鱗をスーツ状に纏ってダークヒーロー風に!」


 アネットさんの驚きの声が聞こえる。


 「はっはっはっは♪ ほれぼれするほど格好良いぞ我が夫よ、ダークなフォルムのドラゴンヒーローは王道であろう♪」


 メーアさんが豪快に笑う、そんな感じなのか今の俺。


 「汚い! いきなり好感度上げに行く、ドラゴン族汚いよ!」

 「ヒロイックで格好良い怪人形態何て、ずるいです~~~!」

 「流石はドラゴン族、中二病特攻な人気種族なだけはありますわね!」

 「その黑に私の赤が混ざれば、黒き炎の戦士ですね主♪」


 クーネさん、マミーラさん、ヴィクトリアさんは何を言ってるんだ。

 リータさんも見物してるなよ。


 俺の怪人形態の品評会みたいなのは終わった。


 「武器の素材とかどうしよう?」

 「安心するが良い、我が角も爪牙も鱗も差し出そうぞ♪」

 「いや、良いのかよ自分の体は大事にしないと!」

 「我を狩りに来た物とは思えぬ言葉だな? だが、その労わりは心地良いぞ♪」

 「いや、尻尾を俺に巻き付けるなよ!」


 甲板の上でメーアさんが元に戻った俺に尻尾巻き付けてくる。


 「ちょっと待つでちゅ~~! 尻尾なら私の方がモフモフでちゅ!」

 「私達もくっつきますわ!」

 「尻尾はないけど糸はあるよ~♪」

 「こちらは包帯がありますよ~♪」

 「そうですね、私も主の体内に入ります」


 俺はメイド達全員にもみくちゃにされたのであった。


 「お帰り~♪ 勇太、あんた大物釣ってきたわね♪」

 「いや、祖母ちゃん?」

 「頑丈そうで良いじゃない、メーアだっけ? 訓練所に通いなさいね♪」

 「……く、力の差は明白そして義理の祖母の命とあれば従おう花嫁修業だ」


 屋敷に帰ってきたら祖母ちゃんが出迎えてくれた。

 メーアさんは、祖母ちゃんの力を瞬時に見極めて従い一緒に魔界へと向かった。


 「あのドラゴン娘、訓練所から帰ってきたら優しく出迎えてやりまちゅか」

 「そうだね、後輩として迎えてあげよう」

 「ええ、乗り越えて来たら立派な同志ですわ」

 「あの人にも、私達が受けた地獄を乗り越えて貰いましょう」

 「ブラックシードラゴンの生命力なら、問題ないはずです」

 「うん、相当ヤバい特訓だろうな」


 連れて来たそうそう、メーアさんは訓練所行きになった。


 そして俺は期末試験に突入した。


 「ふう、なんとか無事に終わったぜ」

 「お疲れ様でございましたね、勇太様♪」

 「いや、誰だあんた!」

 「メーアでございます、本日よりメイドとして正式に配属となりました♪」

 「いや、空気変わり過ぎだよ!」


 屋敷に帰ると、玄関で掃き掃除をしていたメイド服よりも着物とかが似合いそうな位におしとやかに変貌したメーアさんがいた。

 出会った時の、一人称が我とか言っていたのは何処へ行った?

 サイズダウンしたのは人間に化けてるからか?

 そんな、急に変わり過ぎだよ。


 「あの、私を見つめていただけるのは嬉しいのですが恥ずかしいです」

 「あ、いや? なんかそのすまない」

 「アネットさん達もお待ちですよ♪ ささ、お入りくださいませ♪」

 「ああ、ただいま」

 「「お帰りなさいませ~~♪」」


 いつもよりも明るく、アネットさん達が出迎えてくれた。

 ああ、何か帰って来れて嬉しくなった。

 自室に荷物を置いて制服から、パーカーにストレッチパンツとラフな格好に

着替えて地下の基地へと向かう。


 「しかし、急変し過ぎと言う気がするな」

 「その方が勇太様の寵愛をいただけると教わりましたので♪」

 「いや、訓練所ってどういう場所だよ!」

 「勇太様のメイドとなるべく、地獄の訓練を施す学び舎でしたわ♪」

 「ツッコミが思いつかない」


 メーアさんの言葉に頭が追いつかなかった。


 「そうそう、これをお渡しするのを忘れておりました♪」

 「これは、黒い刀? 刃もデカいな?」

 「はい、私の角や爪牙に鱗を用いた太刀です♪ 鍔と柄が私を模してます♪」


 金の角の黒龍の頭が鍔でグリップが龍の体、一応日本刀っぽい。

 刀身は黒く波のように反り、切れ味が良さそう。


 「名前は、黒波丸くろなみまるです和風が良いだろうと」

 「確かに、わかりやすいし水属性を感じるぜ♪」

 「お褒めに預かり光栄です、そして柄を握られると心地良いです♪」

 「ちょ、武器と感覚をリンクしてるの?」


 身もだえするメーアさんに驚く俺、そんな時にアラームが鳴り響いた。


 「大変でちゅ、桧原村の森がアブダクターに放火されまちた!」

 「マジか! 全員出動!」


 新人のメーアさんも連れて全員でセベック号に乗り出動する。

 現場上空に着くと、森林火災が起きていた。


 「消火ですね、お任せ下さい♪ ピギャ~~~!」


 甲板に出たメーアさんが大口を開けて冷凍ブレスをぶっ放す。


 「空から来た船が何かぶっ放したぞ!」

 「いや、あれは例の悪魔のヒーロー達だ!」

 「凄い、一気に消火されたぞ!」


 地上で叫ぶ、消防団の人達の声が聞こえる。


 「え~、皆様♪ 只今よりモンスターメイドコマンドーズが戦闘に入ります♪」


 マミーラさんがマイクで地上に避難勧告を行う。


 「お、流石消防団の人達はわかってますね♪」

 「クーネ、私らに巻き込まれたくないんでちゅよ?」

 「判断が早いのは良い事ですわ」

 「そうだな、皆行くぞ!」


 俺達は全員で飛び降り空の上で輪になり回りながら着地。


 「出たな、ヒーロー共! よくもスギ花粉撲滅計画を邪魔してくれたな!」


 リトルグレイの戦闘員を引き連れた緑色のトカゲ人間。

 チュパカブラっぽいのが叫ぶ。


 「ふざけるな、エイリアン達に日本の産業を壊させはしない!」

 「マイロード、私とメーアさんの力を!」

 「共同作業ですね、了解です♪」

 「行くぜ、ブリザードセベクだ!」


 俺はマイーラさんとメーアさんの二人と合体し、新たな姿ブリザードセベクフォームに変わる。


 胴体の鎧は緑色のワニの頭、マスクの上に黒い龍の頭部を模した兜。

肩と腰回りにはトゲトゲした氷の装甲が付き鎧武者もどきになる。


 「黒波丸抜刀! 血も凍える荒波の太刀を受けてみよ!」

 「舐めるな、行けグレイ共!」


 敵が戦闘員をけしかけて来る。


 「皆下がって、氷結回転斬り!」


 グルンと一閃させれば、リトルグレイ達は切り倒されると同時に凍りつく。


 「まだだ、グレイなんぞ畑でなんぼでも取れるわい!」


 チュパカブラ男が叫び、ボールを投げればお替りの戦闘員が出てくる。


 「新人達ばかり目立たせないよ~♪」

 「先輩の強さを見せつけるでちゅ!」

 「私達もおりますのよ♪」


 魔界メイド達が戦闘員の相手を引き受けてくれた。


 「せりゃ、一凍両断! ブリザードスマッシュ!」

 「ぎゃ~~~っ! 舌が切られて凍った!」


 俺は怪人を担当だと、黒波丸を振るいチュパカブラ男の下を切り取る。

 切り落とした敵の舌は凍り付いていた。


 『さあ我がファラオ、止めを♪』

 『決めちゃって下さい♪』

 「冷気増産、アイシクルエッジ!」


 俺は黒波丸に空気中の水分の冷気の刃を纏わせ、太刀から斬馬刀へと変える。


 「冷凍両断、ウィンタースラッシュ!」


 大上段から冷気の斬馬刀を振り下ろし、怪人を倒す。

 こうして俺は新たに、水の元素の力を手に入れたのであった。

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