第27話:期末前、魔界の海で龍を漁れ!

 談合坂の事件が終わり、俺は来週から期末テストと言う事で勉強に追われていた。

中間が好成績だからと言って、期末は落とせない。

教科書を開き、ノートに試験範囲の問題と解答を書いて記憶して行く。

勉強は頭にダメージが行くが、負けてはいはれない。

実戦に出る為にも疎かにできない。


 「魔族の力で強化されても、知識の入力は自分でやらないと駄目だよな」

 「お坊ちゃま、そろそろお休みくださいませ!」

 「……ひいっ! ヴィクトリアさん! 何か、ちょっと怖いんですが?」

 「お坊ちゃまの寝不足で、嫁いびり的な特訓を受けさせられましたので!」

 「その節は家の母が、申し訳ございませんでした!」

 「では、スリープダーク♪」

 「ぎゃ! 闇属性の睡眠魔法!」


 俺は影の中から現れた吸血鬼メイドのヴィクトリアさんに、不意打ちで魔法を掛けられて眠らされた。


 翌朝、クーネさんが起こしに来ていつも通りに制服に着替えて食卓へ。


「おはよう勇太、きちんと寝られた?」

「いや、祖母ちゃん? 試験前だから勉強してたんだけど?」

「寝不足の方が駄目よ、ソースは高校時代に赤点取った進三郎」

 「祖父ちゃん、知的なのに?」

 「いや、勉強よりもルビーとの高校生活が楽しくてね♪」


 祖父母も揃って食卓にいた。

 いや、居て然るべきなんだけどねここは祖父ちゃん達の家だし。


 「父さん達は?」

 「あの二人はサンダーベヒモスの肉に飽きたからって、贅沢ね」

 「まあまあ、一頭は多かったからね♪」


 祖父ちゃん達が俺の問いに答えてくれた。

 確かに、あいつデカかったし肉も多かったな。


 「と言うわけで、今朝はローストベヒモスのサラダでございます~♪」


 マミーラさんが指し示すのは食卓の上の大きな一皿。

 見た目も味もローストビーフだが、サンダーベヒモスと言う象もどきの肉だ。


 「高校生の時期はガッツリタンパク質を取りなさい、野菜もね」

 「勇太もルビーみたいに、たくさん食べて魔力を高めた方が良い♪」

 「魔力って、飯で鍛えるの?」


 いや、マジで謎エネルギーだぜ。


 「そうそう、学校から戻ったらクエスト出すからね♪」

 「お、おう? 試験勉強は?」

 「勇太、ペーパーテストだけじゃ実戦じゃ勝ち抜けないわ♪」

 「息抜きも必要だよ、運動も大事だからね」

 「いや、試験の息抜きの運動ってレベルじゃなさそうだけど?」

 「当然よ、あんたは魔王候補なんだからね♪」

 「あ、はいそうでした」


 祖父母達による、俺hの魔王教育計画も進んでいた。

 何はともあれ、明日普通に学校に行くには乗り切るしかねえ。


 そして帰宅後、俺は魔界の黒い海の上に仲間達と出ていた。

 リータさんが体内にいて、サンダーベヒモスのコートを着ているのにも寒い。

 セベック号の甲板の上にベヒモスランスを持って出てきたが、寒すぎた。


 「夏が近いけど、ファッキン寒いよ!」

 「北の海は、夏前でも寒いでちゅ!」

 「イフリートも凍るって言うしね、寒い!」

 「寒さで、冷凍ミイラになりそうです~~~!」

 「皆様、一旦船室に戻りませんこと?」


 メイド達もそれぞれの色のコートを着ているが寒さに震えていた。

 北風が物理ダメージで来るよ、魔界を舐めてたよ!

 これは変身しても寒いんじゃね?


 船室内に戻り、紅茶で断を取りながら話し合う。


 「今回のクエストは、水の元素の力を手に入れるんだよな?」

 「でちゅ! マミーラのセベクフォームの相性は水属性でちゅから」


 アネットさんが答えてくれる。

 俺が祖母から受けたクエスト、それは水と氷の力を身に着ける事だった。


 「実際にお坊ちゃまとマカイザーの鎧が取り込まないといけないとはいえ、局所過ぎやしませんか?」


 クーネさんは室内でも震えていた。


 「ですが、この北の海に出る高レベルモンスターを倒さねば帰れません!」


 ヴィクトリアさんが暗いトーンで呟く。


 「北の海に住むと言われるブラックシードラゴン、強敵です」


 マミーラさんがモンスター図鑑を開いて説明する。

 ブラックシードラゴン、高級素材か。


 「しかし、海のモンスターを相手にするのは初だがセベック号は持つのか?」

 「大丈夫です、セベック号ならどうにかこの局所でも耐えられます!」

 「そうだね、ミイラ兵の皆さんも一緒に勝って帰ろう♪」

 「流石は、我がファラオです!」


 マミーラさんが涙ぐむ。


 「良し、戦闘モードだ! こうなりゃきっちりやってやる!」

 「「イエス、マイロード!」


 俺達は気合いを家れて変身した。


 『坊ちゃん、そうは言うがオイラこのまmだと冷凍カボチャになっちまうよ!』

 「その時は俺も一緒だ、命は預けた!」

 『カ~~~! そう言われちゃあ、カボチャが廃るってもんよ♪』


 最近喋るようになったバックルも気合を入れた。


 変身して甲板に出る、龍でも何でも出てこい!

 空元気でも元気だ。


 波が荒れて船が揺れる、そして海の底からか強大な魔力が近づくのを感じる。


 「頼むぜベヒモスランス、行って来るぜ!」


 変身して防御力を高めて寒さに耐性を付けてから、ジャンプで海に飛び込む。


 「ちょ! マイロードが一人で、行っちゃったでちゅ!」

 「私らは船を守るんだよ、信じるしかないね」

 「感知できますから大丈夫ですわ」

 「ブラックシードラゴンの餌となる、魔界マグロの群れが出ました!」

 「よっしゃ、私らはマグロ漁だよ!」


 俺が海に潜っている中、仲間達の様子がマスクに映る。


 魔力を辿り海の底へと潜って行けば、見えてきた。


 黒い鱗に金の角と爪、東洋の龍みたいな長いタイプ。

 新幹線と同じサイズかな?


 見つめ合う互いの瞳、距離は大分あるはずだがこっちが潜らないと船がヤバい。

 相手の土俵である海底へと突っ込む。


 『坊ちゃん、こいつ雌だ!』

 「いや、今その情報はいらねえ!」


 サンダーマカイザーとなり、落雷の如く海底へと突っ込む。


 「冷凍ブレス化、打ち砕く!」

 『突撃~~~!』


 接近したら、相手は頭の大きさだけで五階建てビル程だった。

 ドラゴンが口を開け冷凍ブレスを吐き出して来る、範囲が広いので避けられない!

 ランスとブレスがぶつかり生まれた氷を砕きながら、突っ込む。


 「こうなりゃ、一寸法師でおなじみの体内攻撃だ!」

 『内側から、食い破ってやろうぜ!』

 「スパイラルサンダーアタック!」


 俺はドリルも自分も回転し、放電と回転と突撃を同時に行う。

 だが、相手は踵を返して尾を振るって来た!

 激しい衝撃が起こり、双方が弾かれる。


 『貴様、我が領域に踏み込むとは何が目的だ?』

 「お前が欲しい! その血肉も力も全て寄こせ!」

 『いや、坊ちゃん? その言い方は、マズくね?』

 「何がだ、間違ってない!」


 ブラックシードラゴンが思念で語りかけて来たので叫ぶ。

 嘘は言っていないのに、うちのバックルは何を言うのだろう?


 『貴様の記憶を読み理解した、我をメイドにして従えたいとは面白い』

 「は、ちょっと待て? どういう理屈だ!」

 『いや、坊ちゃんの記憶を読んだって言ったろあの雌ドラゴン!』

 「は? いや、もしかして嫁取りと勘違いされてる?」


 そういやあこのドラゴン雌だと言ってたが、もしかしてやらかしたか?


 「良いだろう、貴様の番になってやろうではないか♪」

 「げげっ! モンスター娘になりやがった!」


 ブラックシードラゴンが、瞬時に長い黒髪に金の瞳で逞しい体付きの俺より少し年上っぽい美少女へと姿を変えた。


 全身をスイムスーツみたいに黒い鱗で覆ってる。


 「いや、そういうのじゃなくて?」

 「記憶は読んだと言ったであろう、その上で我は貴様について行くぞ♪」

 「いや、他に嫁はいるんですが?」

 「魔王になるのだ、気にするな♪」

 『坊ちゃん、諦めてメイドの姉ちゃん達と相談しな』

 「取り敢えず、上がるか」


 こうして俺は、ブラックシードラゴンを仲間にしたのであった。

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