第24話:振るえ雷槍、ベヒモスランス!

 祖母ちゃんのクエストを達成し、サンダーマカイザーの力を手に入れた。

 狩ったサンダーベヒモスは、ありがたく素材と食材にしてその命をいただいた。


 「……うん、美味しいですっ!」

 「しっかり味わいなさい、それが命の味よ♪」

 「……うん、残さずいただきます」

 「お替りもたくさんあるわよ♪」

 「責任取って、しっかり食べます」


 祖母に優しく促され、ピリ辛なカレーうどんをすする。

 屋敷の食卓に一家全員が揃い、サンダーベヒモスの料理を囲む。


 「いや~~ジビエ最高♪ 高級食材のカレーうどん、美味しいですよ!」


 いや、クーネさんはうどんも他の肉料理もバリバリ食べてるな?


 「お坊ちゃま、お一人で高レベル魔獣を狩られるとはご立派になられて!」


 ヴィクトリアさんは泣きながら食べてる。


 うん、マカイザーの鎧がなければ死んでたよ。

 そしてサンダーベヒモスは、やはり高レベルのモンスターだったんだ。


 「お坊ちゃまからの愛の現物支給! がっつり、いただくでちゅ!」


 アネットさんもまっしぐらに、サンダーベヒモスのステーキを食べる。


 「この噛むと同時に電気がピリピリ来るのが美味しいです~~~♪」


 マミーラさんは、満面の笑みで食していた。


 「サンダ―ベヒモスの料理の肉は全て、私の炎で調理いたしました♪」


 リータさんはドヤ顔で胸を張る。


 「で、勇太は一人で戦って見てどうだった?」


 父さんが俺に尋ねて来る。


 「ああ、心身共にやばかったよ。 皆のバフがありがたかった」


 やる気出して頑張ったけど、仲間がいるのとでは気持ちの負荷が違った。

 これまでは、仲間のお陰でバリバリ快調に戦えていたんだと心底実感した。

 一人で長時間戦っていると、気が滅入てくるんだよな。

 仲間のありがたみや、戦いの大変さを体験できた出来事だった。


 電撃だけでも厄介だったのに、牙や踏み付けと言った物理攻撃とかも来たら生還できるかわからなかったぜ。


 「ルビー、サンダーバード辺りからで良かったんじゃないか?」

 「駄目よ進三郎、低レベルの魔獣じゃ勇太の修行にも武器の素材にもならないわ」

 「確かに、地球の怪人もこれからもっと手強いのが出て来るだろうしなあ」


 祖父ちゃんと祖母ちゃんが食事の手を止めて語り合う。

 祖母ちゃんの言うように、高レベルのモンスターを倒さないとレベル上げの経験値は入らないからな。


 「勇太、頑張ったわね刺すが私達の息子♪」


 母さんが豪快にサンダーベヒモスの唐揚げを喰らいながら笑う。

 メイド達は母さんの姿を見てビシッと居住まいを正した。

 やはり、アネットさん達も母さんから特訓で鍛えられたのかな?


 「そういや、俺なんか電気人間みたいにピリピリ出せるようになったんだけど?」

 「おお、お坊ちゃまが中二病なサイキック戦士みたいに!」

 「クーネさん、マンガとか好きでしょ?」


 うどんの入った丼を食卓に置き、右手から少し黄色い稲妻を放電して見せる。


 「元素の力をあんたが取り込んだからよ、雷は光属性ね♪」

 「え、風じゃないの? 風力発電とかあるけど?」

 「火も温度が上がればプラズマに至りまちゅけど、属性は変わらず火でちゅ♪」

 「アネットさん、ありがとう」

 「勉強もやりなおさせれまちた~~!」


 母とアネットさんが教えてくれた、科学と魔法は色々違うらしい。


 「私達も軍学校で座学に実技にと再訓練でしたわ」

 「私は、お勉強は得意でしたから問題なかったです~~♪」

 「私も座学はこなせました」

 「リータさんも勉強できる組だった?」


 ヴィクトリアさんとマミーラさん、そしてリータさんが受けた訓練を語る。


 「まあ、勇太もメイドさん達もどちらも頑張ったんだよ♪」

 「そうね、これからは定期的にメイド達も鍛えるわ♪」


 父さんが穏やかに話を終わらせる。

 母さんは、メイド達に凶悪な笑みを浮かべた。


 「まあ、勇太には僕と灯彦君が新しい魔具のベヒモスランスを作るよ♪」

 「え、マジで? 祖父ちゃんと父さん、ありがとう♪」


 新フォームに新武器、燃えるぜ!


 翌日、学校の教室で友人達に雷の力を見せてみた。


 「と言うわけで、自力でスマホの充電できるようになったぜ♪」


 能力の制御の特訓の一環でスマホの充電を身に着けた俺。

 

 「勇太、俺のスマホ充電してくんね? 友達価格、三百円でどうだ♪」

 「僕も頼みたい」

 「私もお願いできるかな?」

 「わかった、スマホに充電器付けてくれ」


 友人達のスマホの充電器に手を当てて魔力の雷を慎重に注ぐ。


 「すげえ! 一気に百パーまで行った♪」

 「魔力と言う物は、こんな事もできるのか!」

 「ありがとう、またお願い♪」


 武やタカさんに御子神さんといつもの友人達が三百円ずついつも。

 これは昼休みに購買でパンとか買おう。


 ……うう、しかし変身しないで魔力を使うとカロリーも消費されて腹が減る。

 一度に充電でできるのは三台までが限界だな。

 人の物を壊さないように気も使うし、心身が疲れるぜ。


 その日の夕方、基地の訓練ルームで新装備のベヒモスランスを受け取った。


 「青の柄に金のドリルランスの穂先、これが命の重みか」


 穂先の反対側は青い象の頭に金の牙か。

 倒したサンダーベヒモスに大事に使うと祈る。


 「流石にこれは、新しいメイドになりませんよね?」

 「もうこれ以上は増やさないで欲しいです~~!」

 「みだりなお手付きはいけませんわ!」

 「まあまあ、流石に主がメイド好きでもないと思いますよ」

 「リータは甘いでちゅ、お坊ちゃまの思春期パワーは予測不能でちゅよ?」

 「うん、大丈夫だってそんな都合のいい事は起きないから」


 倒したベヒモスは雄だったし、リータが例外だったんだ。


 物思いに耽りかけた時、けたたましくアラートが鳴り響いた。


 「事件発生です、超高速で移動するアブダクターの怪人が福生市で暴れてます!」

 「マジか、なら早速こいつの出番だ! MMC、ゴー!」

 「「イエス、マイロード!」」


 俺達は空から行く方が早いと、セベック号を飛ばして緊急出動した。

 現場上空に着けば、竜巻が街の人々を吹き飛ばして円盤に吸い込んでいた。


 「よし、皆は円盤を頼んだぜ♪」

 「「アイアイサー!」」


 俺はサンダーマカイザーに変身し外に出て、ベヒモスランスを構えて竜巻へと突っ込んだ!


 「げげ! 俺様の風を突き破って来ただと!」

 「風より雷の方が強いんだよ! ゲイル星人、覚悟!」


 竜巻の中にいたのは、緑色のつむじ風人間とでも言うべき怪人だった。

 俺が突撃した事で竜巻が止み、怪人との戦闘となる。


 メイド達は逃げる円盤を空飛ぶ船で追い空中戦を始めていた。


 「風神二刀流を受けてみろ!」

 「回転ならこっちもできるんだよ! ついでに放電攻撃!」

 「ぎゃ! おのれ小癪な!」


 二刀で踊るような回転斬りを多用する相手に対し、こちらはランスの穂先を回転させて相手の刀と打ち合い突き返して行く。

 牽制で小さな雷を飛ばして、チクチクダメージを与えつつ勝機を狙う。

 敵が建物が壊れる程に暴れたおかげで遮蔽が減って戦いやすくなってはいる。

 だが、街にも人にもこれ以上の被害は出させたくない。

 守る為、助けるために敵を倒すんだ。


 「そうか、こいつで飛ばすぜベヒモスフック!」

 「な、何だ! 象か?」


 ランスをひっくり返し、象頭の石突きの牙を伸ばして切り上げ怪人を勢いよく空へと打ち上げる。


 「こいつで決めるぜ。 雷槍よ天を穿て、ライジングサンダー!」


 再度ランスをひっくり返し、穂先を回転させ放電しながら稲妻となって飛翔。

 上空に打ち上げられた怪人に、反撃の隙も断末魔の叫びを上げる暇も与えぬ雷の速度で貫き爆散させた。


 「よし、怪人撃破♪ 皆も円盤を片付けてくれたか♪」


 地上に降りて空を見上げれば、セベック号が蜘蛛の糸で雁字搦めにされた円盤を鹵獲している姿が見えた。

 何となくランスの象の頭を撫でたくなって撫でてみたら、パオンと鳴いて喜んだ。

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