第23話:元素の力、サンダーベヒモス討伐

 イフリートマカイザーとなり、魔女ゼラチーヌを撃破した俺。


だが、自分でも怒りの感情に飲まれ過ぎていた戦いであったと振り返る。

戦いで負の感情に飲み込まれるのは、やはり駄目だよな。

暴走したら大変な事になる、力を手にしたからこそ取り返しのつかない事をしでかさないように制御しないと俺だけでなく仲間にも迷惑を掛ける事になる。


己を戒めねば、何の為に戦うのかを忘れてはいけない。

 いや、思い返したけどバカでかい火力ぶん回して大暴れとかヤバいわ!

 傍から見たら俺の方が悪役だよな、見た目的にも。


 ハーベストの魔女共、見た目は美少女とかもいるから気を付けて戦わねば。

 見た目は判断材料の一つだけど、人は視覚情報から判断するからマジで面倒。

 人はとか思い出した、魔族に近づいてるのかな?

 まあ、魔族成分も人間成分も大事にしていきたい。


 翌日、六月の梅雨時に戻った東京の空の下の学校。


 「世間の目って言うのは悩ましいですなあ、勇太君♪」

 「ヒーローって人に見られる仕事ですからね」


 放課後の部室で花果先輩と向き合って座り、せんべいを食いながら駄弁る。


 「昨日は勇太君のお陰で、雪が止んでくれてよかったなりよ~♪」

 「どうもっす、他の皆は?」

 「相変わらず他所とのかけ持ちだねえ♪」


 先輩が笑う、実績とか大丈夫かマジカルヒーロー部?


 「で、パワーアップしたんだよね♪ 見せてくれる♪」

 「うっす、こんな感じで」


 俺は右腕だけイフリートガントレットを装着して見せた。


 「おお~~~♪ 良いじゃん、中二心をくすぐる奴キタ~~~ッ♪」

 「いや、先輩ブレないな!」

 「……ふ、オタクはブレないもんよ♪」

 「いや、大丈夫っすか先輩?」


 明るく楽しいが、酷い目に合わないか心配になるなこの人。

 何気に、俺がメイド達以外に自然と話せる貴重な女子なので。


 「まあ、何かあったらスポンサー権限で頼むよ~♪」

 「そっすね、友情とシノギの為にお守りいたします」

 「いや、そこは可愛いハナカちゃんは俺が守るぜ! ってな感じにならない?」

 「先輩がモンスター娘メイドだったなら考えます」

 「いや、君もブレないなオイ!」

 「そこはもう、モンスターメイドコマンドーズのリーダーなので」


 俺の魂はモン娘メイドに捕らわれてるので、人間の美少女は受付けないっす。


 だらっとした部活で精神の疲れを癒して下校する。

 リータさんの一件で、夢の中にも仲間達が入って来るので精神が寝不足。

 身も心もぐっすり寝たいぜ、睡眠不足はヤバい。


 曇り空の下、家路を歩いていると見覚えのある赤いジムニーが近づいて来て止まり後部座席のドアが開くと同時に俺はクーネさんに回収された。


 車に乗せられてからの事は覚えていないが、翌朝はスッキリ目が覚めた。


 「ふう、良く寝られたぜ♪」


 自室のベッドの上で、クーネさんが編んだ黒の甚兵衛姿で目覚めた。

 何があったのかはわからないが、着替えとかはクーネさん達がしてくれたんだろう。

 「勇太、おはよう♪」

 「祖母ちゃん! お、おはよう」

 「ごめんね、メイド達は反省させてウーとキャンプに送ってるから」

 「あ、察しましたた」


 ピンクの着物に白い割烹着姿の祖母ちゃんが部屋に入って来て告げる。

 まあ、大体わかった。


 「はい、今朝はお祖母ちゃんお手製の魔界アジのつみれ汁丼よ♪」

 「おっす、いただきます」


 丼山盛りご飯につみれ汁をかけた物、と言う雑だが美味いメニューを平らげた。


 「ごちそうさまです、俺のステータスに何かあった?」

 「そうね、火属性は良いけれど他の属性が低いかしら?」

 「元素って、地水火風光闇のあれ?」


 祖母ちゃんが俺のステータスを見ながら呟く。


 「力について悩んでるみたいだし、思いきり力を使ってマックスを知りなさい」

 「もしかして、いよいよ魔界での修行とか?」

 「ええ、まだまだお試しだけど魔界にも慣れさせないと」

 「おっす、頑張ります」

 「と言うわけで学校から帰ったら、クエスト受けさせるから♪」

 「一応聞くけれど、日帰りで出来る奴?」

 「安心しなさい、地球では一時間くらいのクエストだから♪」


 と言う事を言われてまずは学校へと送り出される。

 学校では普通に授業を受け、祖母の作ったチャーハン弁当を食いと日常をこなして帰宅する。


 「お帰りなさい、勇太♪」

 「おっす、んじゃあ早速お願いします」

 「ええ、ばっちゃのクエストはあんたの次なる武具の素材採取よ♪」

 「素材採取?」

 「そ、鞄置いて変身して来たら転送するから頑張りなさい♪」

 「おっす、がんばります」


 出迎えてくれた祖母の言葉に従い、二階の自室に荷物を置いてマカイザーに変身してから玄関に戻る。


 「それじゃあ、ワンタイムパス発行! 行ってらっしゃい♪」

 「おっす行って来ます!」


 祖母ちゃんの魔法で俺の頭上の白く輝く魔法陣が生まれ、俺は陣に吸い込まれた。


 「うお! ここも魔界か、何か地面は黒いし空は雷がゴロゴロしてるな?」


 魔界の空を見上げれば、空は一面灰色の雲に覆われて放電してるのが見えた。

 何か妙な感じがしたので飛び退くと、先ほどまでいた地面に落雷が!


 「ちょ、ここは落雷ステージかよ!」


 ランダムで周囲に雷が落ちて来る現場。

 突如地震の如く大地が揺れ、大砲の如き泣き声が響いてきた。


 「はあ? 黄色いマンモスの怪獣っ!」

 『バオ~~~ン!』


 脳内にサンダーベヒモスと言う名前や性質などの情報が文字で浮かぶ。

 こいつが得物か!


 頭を上げ、鼻で落雷を吸い込むサンダーベヒモス。

 リータさんもブートキャンプでいないので、ノーマルの状態で魔王の炎を燃やして突っこむ。


 『バオオオ~~~~ッ!』

 「ぐはっ!」


 相手が鼻からぶっ放した雷のビーム。

 両腕をクロスしてガードしたが、交通事故みたいに吹き飛ばされた!


 「いててて、げふっ!」


 マカイザースーツのお陰で五体満足だが衝撃は体に来てる。

 自動回復魔法が発動し急速に打身だとかが治されて来て気持ち悪い。

 地面を転がりながら移動して起き上がる。


 「あいつの牙、皮膚、肉に骨と捨てる所なしの素材だな」


 脳内に文字が浮かぶのが見える。

 祖母ちゃんが魔法で書いているのか?

 カレーにすると肉も美味いとか知恵袋かよ!


 仲間達の機能はオフにしてるから、自分の魔王の炎だけで戦えとまた脳内に文字が浮かぶ。


 「おっしゃ、一人で出来るもんって奴だこんちくしょう!」


 叫ぶと胸が熱くなる、腹の底から力が沸いて来る。

 魔界の空気とかが俺に力をくれている気がした。

 何となくの皮膚感覚で空の落雷を避けつつ走り、ジャンプ!


 「マカイザーキック!」

 『バオオオッ!』


 肉が硬い、ビリッと来たけど相手にもダメージが入った?

 同時にサンダーベヒモスが叫び、全身から放電する。


 「あばっばばばっ! マカイザーウィング!」


 痺れる、けど必死に耐えて翼を出し魔力を放出して姿勢制御し着地。

 同時に脳内に文字が浮かび、今の自分の全体像が見えた。


 「うおっ! 籠手もブーツもボディもマスクも黄色くなってる!」

 『これが元素の力だぜ、坊ちゃん♪』

 「ちょ、バックルがしゃべった!」

 『おう、宜しくな坊ちゃん♪ さあ、サンダーマカイザーで反撃だ♪』

 「安直っ! だけど納得、サンダーダッシュ!」


 いつの間にか新フォームになり、手に入れた雷の力で稲妻となって突っ込む!


 『バオンッ!』


 再度、サンダーベヒモスの横っ腹に体当たりすれば今度は奴をすっ転ばせた♪


 『よっしゃ、行けるぜ坊ちゃん止めだ♪』

 「ああ、そんな気がする! サンダーマカイザーキック!」


 バックルの言葉に同意し天高くジャンプ。

 奴と同じように体に雷を取り込み力に変え、稲妻の槍となり落下する。

 轟雷一閃、俺はサンダーベヒモスの首と胴を物別れにさせて着地した。


 「ごめん、そしてありがたくその命いただきます」

 『坊ちゃん、あんた優しい人だな』

 「そんな事はないよ、狩りで命を奪ってるし南無阿弥陀仏」


 サンダーベヒモスに手を合わせて祈る。

 亡骸はバックルが吸い込んだ。

 こうして、俺はまた一つ新たな力を得られた。

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