第20話:封神モンスター

 「封神モンスター? 何だか邪仙同盟が絡んでいそうだな」

 「身の回りにある物全部に、悪の組織が絡んでそうだもんな」

 「僕もそんな風に思えて来て困るよ」

 「私も、ヒーロー症候群かなあ?」


 週明けの教室、話題は休みの日に自分が遭遇した事件。

 石を投げれば事件に当たるこのご時世、友人達も休みを悪に潰されていた。

 そんな中、封神モンスターと言うカードゲームの話題が出る。

 封神カードに捕獲したモンスターを、仙獣として使役して戦うゲームだ。

邪仙同盟の表のシノギではなかろうか?

悪の組織も経済活動はしてるし。


 「まあ、事件が起きたら対処するしかないよな」


 後手に回るが、ヒーローなら何をしても良いと言うわけではなく。

 事件の可能性だけで何処かの藪を突くと言うのは、一般人や社会にとって迷惑となるので戒められていた。


 「好き勝手に力を振るえば、俺らも悪の怪物と変わらないしな」


 ふと思った事を呟く。


 「だな、舐められるのは嫌だけどヘイト買ったら生きて行けねえしよ」


 武も呟く。


 「うん、ヒーローって世間に支持されてないといけないよね」


 御子神さんは溜め息だ。

 彼女の場合は、実家の神社に所属のヒーローだから身バレしてる。


 「ヒーローが政権を取ってる日本だからこそ、世間を警戒しなければならないな」


 タカさんも頷きながら語る。


 九十年代にヒーロー達が日本ジャスティス党を立ち上げて政権を取った。

 そのおかげでヒーローが社会に取り込まれ、政府による社会保証の対象となった。


 悪の組織から世界を守った英雄が、ホームレスやスクラップになって死ぬとかはなくなったけど法規制で思うようにパワーを発揮できなくなったと一長一短だ。


 公民の授業で世知辛い話を聞きながら、そんな事を想う。

 先人達が築いて来た社会で俺は、どうヒーローとして振舞おう?

 魔王になって地球と友好関係を築くとか、ふわっとした事しか思いつかない。

 まだまだ、勉強しないといけない事が山積みだと感じられた。


 授業が終わり部活の時間、花果先輩が妙な事を言い出した。


 「晴間君、封神モンスターの裏カードって知ってるナリか?」

 「それは俺に調べるからチームに入れとの事ですね?」

 「そうそう、メイドさん達も連れて来てちょ♪」


 部活と言う名の遊び時間。

 花果先輩と携帯ゲーム機で対戦しながらご指名を受ける。


 「ギャラは何処からか出ます?」

 「大丈夫、パパに頼んで君達にイベント会場の警備の依頼出してもらうから♪」

 「ご指名いただきありがとうございます♪」


 流石はスポンサー様のお嬢様、本当に良い先輩である。

 ギャラが出る仕事とあらば、本気出しますよ。


 封神モンスターのソシャゲ版を運営しているセブンフラワーゲームス。

 先輩のご縁で仕事を貰った俺達は、休みを返上してセブンフラワーゲームス主催のお台場にあるイベント会場に来ていた。

 

 ホールのステージで、マジカルハナカに変身した先輩のヒーローショーのやられ役として倒される俺達。

 ショーが終わっても先輩のバックの賑やかしとしてステージ上にいた。


 「ハナカちゃんのショーの後は皆さんお待ちかね、封神モンスタートーナメントの開催だ~~~~♪」


 先輩のコールにレスポンスが上がる。

 大きなお友達の皆さんが盛り上がってらっしゃる。

 怪人形態になった家のメイド達は不機嫌だった。

 ごめんね、休み潰しちゃって。


 封神モンスターはTCGと言うよりはメンコに近かった。

 卓球台程のバトルフィールドに、一対一で向き合いバシバシカードを叩きつけてモンスターを召喚するユーザー達。

 叩きつけられたカードからは、様々なモンスターのホロヴィジョンが出てきてぶつかり合う。


 ステージから降りた俺達は、会場内を見回りヴィジョンではなくガチのモンスターが出てくる裏カードの気配を探る。

 出回っている裏カードは魔力を帯びた黒いカードらしく、魔力を知覚できる俺達向きの仕事と言えた。


 「ん? 何か怪しいな、あいつ?」


 見回りをする中、黒のフード付きパーカーを着た少年を見つけた俺は駆け寄る。


 「ヒャッハ~~~♪ 裏カード、黒バク召喚!」

 「ぎゃ~~~っ! 俺のモンスターが食われた!」

 「あぶねえ、パピルスバインド!」

 「あ、てめえ! 本物のヒーローか!」


 黒いバクの怪物を俺が縛り上げている中、仲間達が参加者の避難を開始する。


 「ち、邪魔すんな! 黒バク、暗黒ブレスだ!」


 少年がモンスターに命じると、敵はこちらに黒いブレスを吐き出した。


 「臭くて気持ち悪いが、ダメージはないぜ♪」

 「畜生、こうなりゃ別の裏カードを召喚だ!」

 「させない、ハナカビーム!」

 「うぎゃ! 俺の裏カードが!」


 ハナカ先輩が玩具みたいなピンクのステッキから発したビームが少年の手を弾く。

 ナイス判断力と素直に思った。

 だが、それにより敵の手から弾き飛ばされたカードが地面に落ちると封じられていた怪物達が出現してしまった。


 「うぎゃ~! 敵が増えちゃったよ~!」


 うん、先輩はオチ要員か。


 雷を纏った黒い犬だったり、黒い狐娘だったりと出てきた怪物が動き出す。


 「そうはさせませんわ!」

 「私達が相手だよ~~♪」

 「モンスターメイドコマンドーズが相手だ!」

 「負けませんよ~~~!」


 俺のモンスター達が、敵の召喚したモンスター達とぶつかり合う。

 ゲームでも実戦でも、戦いは数だぜ♪


 ステージに隠れたスタッフと俺達以外いなくなったホール内。


 仲間達はイベントが再開できるよう、ゲームの台を守りながら戦ってくれていた。


 「マカイザー、術者であその子を倒して! 結界はこっちで展開するよ♪」

 「ちょ、先輩マジっすか!」


 ハナカ先輩が俺とバクと少年に向けて青い魔法の大玉を飛ばしてきた!

 大玉に包まれた俺達は、草原の世界にいた。


 「ち、結界か!」

 「これなら被害を気にしないで戦えるぜ♪」

 「うるせえ、俺様の力を見せてやる!」


 少年は叫ぶと黒バクを吸い込み、黒いマッチョなバク人間へと変身した。

 よし、その姿なら弱い者いじめだとかネットで叩かれなくてすむ!


 「バク~~~~!」

 「いや、バクの鳴き声はそんなんじゃねえだろ!」


 マッチョな剛腕に付いた爪を振るう敵。

 意外と素早い攻撃で初撃の回避はギリギリだった。


 「バク山靠~~~っ!」

 「うお、八極拳かよ!」


 両腕を交差して防御するも、敵のショルダータックルを受けて吹き飛ばされる。


 「マカイザーウィング!」


 吹き飛ばされつつも、背から蝙蝠上の羽を出して空を飛びダメージを受け流す。


 「バクバクラッシュバク~~~!」

 「うお、今度は飛び道具の連続発射かよ!」


 敵が白い光の弾丸を乱射して来た。

 ならばこちらはと、黒い魔力を手足に纏わせて打ち払う。

 こっちも格闘術とかは鍛えられてるんだよ!


 今度はこっちの番だと間合いを詰め、連続パンチを繰り出す。

 敵の方も食らいつつ腕で受けたり払って来る。


 「は、怪人化してタフになったみたいだが効いてないわけじゃなさそうだ♪」

 「ぐ、ぐふっ! おのれ、よくも俺様の邪魔を!」

 「いや、邪魔してるのはお前の方だろうが!」


 自分を棚上げにして襲い来る敵と再度格闘しつつエネルギーを溜める。


 「平和なイベントを、俺達ヒーローの休日を荒らした恨みは許せねえ!」

 「な、何だその黒い炎は!」

 「怨みと怒り呪いの闇の炎だ、マカイザーパンチ!」

 「うぎゃ~~~っ!」


 俺の私怨を込めた必殺パンチを叩き込むと、敵の体から黒い炎が燃え上がる。

 敵を倒した事で、ハナカ先輩の魔法が解けて俺は現実世界に戻った。


 「「お疲れ様です~~~♪」」

 「うおっと、そっちもお疲れ様♪」


 戻って来た俺に怪人モードの仲間達が駆け寄って来る。

 情報は手に入らなかったが、敵を倒してイベントは再開されたのであった。

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