第18話:怪人工船を破壊せよ!

 ハーベストの魔女集会を潰した翌日。


 「……感謝の意を表します」

 「ありがとうございます」


 新宿にある対怪人警察の本部の地下。

 四方が灰色、無機質!

 俺らの周りのトルーパーさん達、銃出してるしヤバい。

 桜田さんが悪のボスとか幹部だよ。

 いや、俺らなんか悪い事した?


 桜田さんが呪文みたいに功績を読み終えて、俺は感謝状を受け取った。

 桜田さんの目は冷たい、周りの武装した警官達の拍手も何か怖い。

 家のメイド達も目が死んでる、嬉しくねえ。

 表彰されたと言う気分じゃないよ!


 「申し訳ないが、誘拐されていたと言う事が公になってはならない方達でね」

 「あ、はい。 何も聞きません、振り込みさえあれば」

 「本来なら勲章物だが、君達には報酬の方が良いだろう」

 「そうですね、ありがとうございました」

 「礼を言うのは我々の方だが、申し訳ない」


 桜田さんに詫びられた、怖い。

 俺達は特殊な目隠し付きヘルメットを被せられ、外へと連れて行かれた。


 「うへえ、生きてるか皆?」

 「無事でちゅ!」

 「同じく無事ですよ」

 「悔しい扱いでしたわ!」

 「まあ、仕方ないですね~」


 都庁近くの公園で解放された俺達は話し合う。

 対怪人警察の方が悪の組織っぽくねえ?


 「発信機や盗聴器の類はありませんね、目隠しされただけです」


 クーネさんが俺の体を探る。


 「変な呪いも薬物もないでちゅ」


 アネットさんは、臭いで俺に何かされてないか確かめる。


 「血液にも異常なしですわ」


 ヴィクトリアさんは、俺の人差し指から血を吸い血液調査。


 「お坊ちゃまに何かされていたらと思うと、ふふふ」


 マミーラさんはちょっとご機嫌が斜めだった。


 駐車場に我が家の車もあったので、車も調査した上で全員で乗り込み帰宅する。


 「俺達、善行積んだはずだよね?」

 「いや、社会が私達の味方とは限らないとか止めて欲しいでちゅ!」


 アネットさんが運転しながら不満をもらす。


 「家の屋敷も何かされてないか調べないと、セキュリティアップデートしなきゃ」


 クーネさんは助手席で震えていた。


 「これは、ますます私達の結束を固めないといけませんわね?」

 「信じられるのは身内だけと言うのは悲しいですが~?」

 「いや、怖いから! 帰ったらお清めしよう、今日はもうコーラにポップコーンで馬鹿映画でも見て気晴らししようぜ?」


 黄泉の国から戻ってきた気分だよ本当に、魔族が神頼みしたくなるってマジかよ。

 一度、皆でお祓いに行こう。


 「そうだ、御子神さんの家に行こう!」

 「了解でちゅ、レッツゴー!」

 「神様ならお酒、樽が良いってさ♪」

 「買いましょう、貰った報酬を浄財ですわ!」

 「神様に課金しましょう~!」


 そんなわけで肝を冷やした俺達は、樽酒やら買い込んで御子神さんの神社へ。

 マネーパワーとお供え物と俺のコネで、祈祷して貰えたよ。

 昇殿参拝とか初めてしたわ。


 屋敷に帰って来た俺達を出迎えたのは四人の人物。


 「祖父ちゃん祖母ちゃん、父さん達も!」

 「お帰り、皆♪」

 「ヤッホ~♪ あんた達、元気ないわね?」

 「勇太、お前もすっかり魔界に馴染んだな?」

 「まあまあ、可愛い子達連れてるわね♪」


 いや、祖父母と両親と久しぶりにあったわ。


 「あわわ、魔王様達でちゅ!」

 「魔界で何かあったのですか?」

 「お義母様、妻筆頭のクーネでございます♪」

 「クーネさん? 呪いますよ?」


 慌ててるアネットさんが一番まともに見えた。


 「いや、何やらあったみたいで気になってね?」

 「桜田の奴にいじめれでもしたの?」

 「いじめというか、表彰された」


 俺は祖父母達に事情を話す。


 「つまり、勇太達がビビりなだけね♪」

 「いや、母さん警察は嫌なもんだよ?」


 祖母ちゃんに似た顔の母さんは豪快に笑う。

 父さんは普通の俺に寄り添ってくれた。


 母さんは何か騎士の鎧着てて、父さんは白いローブ姿だ。

 いや、俺の両親魔界で冒険者でもしてるのか?


 「お肉用意したから今夜はすき焼きよ、肉を食べれば憂さはは晴らせるわ♪」


 祖母ちゃんがすきやきパーティーを宣言する。


 「勇太の好きな蟹もあるぞ♪」

 「いや、祖父ちゃん! その蟹なんか金色でデカいんだけど?」


 魔界の蟹かな?

 俺も手伝い作ったすき焼きで心と腹を満たした。

 うん、牛肉と蟹は心に効く。


 「皆、しっかり魔界の食材を食べて英気を養いなさい♪」

 「祖母ちゃん、魔界飯食えば強くなれるかな?」

 「なれる! あんたの魔王パワーになるからしっかり食べなさい、魔界野菜も♪」


 祖母ちゃんがシイタケとか人参とか俺の器に入れて来る。

 魔界肉とか魔界野菜って何だよ!


 「ママ、自分の苦手な野菜を勇太に食べさせないの!」

 「勇美ゆみだって、灯彦ともひこに人参食べて貰ってるじゃない!」

 「いや、二人共きちんと野菜も食えよ!」

 「勇太は偉い子に育ちましたね、お義父さん♪」

 「そうだね、良かったよ♪」


 晴間家と赤星家の食事の時間。

 メイド達もすき焼きを食いつつ、ほのぼのとこっちを見てる。


 「で、父さん達は魔界で冒険者でもしてるの?」

 「うん、母さんが前衛で僕が後衛だよ♪」


 両親は魔界で楽しく暮らしているらしい。


 「勇太、すまないな黙っていて」

 「ごめんね、あんたに相応しい相手を育成するのに手間どってね」


 母さんがメイド達を見るとメイド達が居住まいを正す。


 「祖母ちゃん達にも言ったけど良いよ、おかげで今楽しいし」


 俺は皆に感謝してる。


 楽しい食事をした翌日、俺達はセベック号で日本海に出ていた。

 ヒーローの仕事である、学校は事件での休みは単位は取れるのがありがたい。


 「工場船、工船って奴?」


 船室でカチコミ前の会議。


 「作ってるのは缶詰でなく怪人と、文学作品よりブラックでちゅね」

 「アネットさん、読書家なんだな」

 「でへへ~♪」

 「いや、漫画になってる奴でしょ? アネットはアホの子ですお坊ちゃま」

 「クーネは性悪でちゅ!」

 「対怪人警察としては領海ギリギリの場所なので、潰して欲しいとの事ですわ」

 「体よくつかわれてますね私達」

 「いつかこの貸しは取り立てよう、魔族らしく」


 何処の国でもない人外の船なら外交的に文句は出ない。

 セベック号、家のヒーロー装備として登録してないのを利用されてるな。

 不審船には不審船をぶつけるんだよですね。


 ワニモードで水中から攻めに行く俺達と、敵の水棲怪人部隊がエンカウント。


 「出たな、魔力魚雷発射!」


 セベック号が口を開けて魚雷を放てば、怪人達の近くで爆発し葬り去る。

 敵の守りを抜けて突撃し、船底に穴を開けて乗り込む。

 広い空間にコンテナや牢屋などが設置されていた。


 「げげっ! どうしてここにヒーローが!」

 「おのれ、我らの野望は邪魔させん!」

 「世界に破壊を!」


 アサルトライフルや斧で武装した、黒い軍服にガスマスクの戦闘員達が襲い来る。


 「世界を壊されてたまるかよ!」


 俺の叫びと共にモンスターメイドコマンドーズが動く。


 「攫った人達は取り返させてもらうよ~♪」

 「お覚悟なさいませ!」

 「魔界メイドのお掃除タイムだ♪」

 「邪悪な者に呪いあれ~~~!」


 変身したメイド達が戦闘員を倒したり、檻に入れられた人達を解放する。


 「くそ、怪人達を起動させろ!」

 「怪人には怪人をぶつけるんだよ!」

 「お前らに俺の仲間を怪人呼ばわりする権利はない、マカイザーギロチン!」


 敵の物言いにキレた俺は、戦闘員達の首を次々に手刀ではねて行く。

 首を斬られたロボットの兵隊達が機能停止して行く。


 「ほう、貴様らが魔界のヒーローとやらか?」

 「お前が親玉か、タイマン勝負だロボット船長野郎!」


 戦闘員達を制圧した後にエレベーターから出て来たのは、人型ロボットの怪人。

 船長帽っぽいヘッドパーツ付きの、マッチョな赤肌金属ボディの男性型怪人だ。


 「俺の名はキャプテンパウンド、行くぞヒーロー!」

 「上等だ、ぶち壊す!」


 敵が全身から火を噴き突っ込んで来る。

 俺は全身を砂に変えて相手の攻撃をやり過ごす。


 「背中が留守だぜ、タランチュラショック!」

 「グワ~~~!」


 背後から敵に蜘蛛糸を射出し電流を放つ。

 そして、床に黒い次元の穴を開けて自分と敵を魔界に引きずり込む。

 「パワーが好きならこいつで止めだ、マカイザーキック!」

 「何、何だここは! 空に月だと? グワ~~~ッ!」


 月をバックに黒い魔力を纏った蹴りを怪人に叩き込み、爆破する。

 敵を倒すと共に、元の場所に戻ると仲間達が待っていた。


 「マイロード、救助完了でちゅ♪」

 「後はこの船を木っ端微塵ですね♪」

 「嫌な仕事は早く片付けてしまいましょう」

 「後は外に出るだけです~~♪」

 「良し、脱出だ♪」


 俺達は敵船から脱出し、セベック号の魚雷で完全に敵の船を破壊して撤収した。

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