第17話:カチコミ、魔女集会!

 山梨での怪獣狩りから戻って来た俺達。

 巨大戦力確保の資金は、まだまだ貯まりそうもなかった。


 「さて、本日の魔界講義は魔女集会についてです」

 「魔女集会?」

 「魔女共の集まりでちゅね、悪のお楽しみ会でちゅ」

 「ヤバい物の取引とか悪事の温床ですよ」

 「悪魔を召喚してのやりとりも行われるそうです」

 「ちょっと皆さん、講師役は私ですのよ?」


 屋敷地下にある講義室、塾の教室みたいな小部屋で勉強だ。

 モンスター娘に囲まれた教室、胸がときめくぜ。


 「話を聞いた限りだと、ろくな集まりじゃないのはわかった」


 最初に倒した魔女、ネルネールも売り買いするとか抜かしていたしな。

 自分が魔女集会に連れて行かれたかもと思うと背筋が凍る。


 「オホン、では続けます。 集会が行われる時間と場所ですが月齢で予測が可能となっております、連中は伝統を重視し月光から魔力を集める特徴がありますので」


 先生役であるヴィクトリアさんが、ホワイトボードにマジックで講義内容の要点を書きながら、話を続ける。


 月から魔力を集めるのは俺達もやってるな、力の根っ子が近いからか。


 「満月に開かれるって、もしかして今日じゃね?」


 室内の壁かけカレンダーの日付を見て気が付く、どうしよう?

 俺ら五人だけで、敵の集まりを潰せるかな?

 俺がまだ未成年だけど、深夜勤駄目の労基法無視して働くしかねえな。

 正義と平和の方が労基法よりも重いぜ。


 「まあまあ、お坊ちゃまは悩まずに♪ 都市部は対怪人警察やヒーローが出張るんで、我々はド田舎の小さい箱でこじんまりした輩を潰しましょう」

 「いや、クーネさんが悪い顔をしてるんだけど?」

 「クーネさんの言う通りですよ、その方が暴れやすいですから」

 「ちょっと、マミーラさんは良識枠では?」

 「マミーラは狡い女子でちゅよ?」

 「はいはい、私の言いたい事を言わないで下さいませ!」


 講義から脱線して来たのでそのまま作戦会議に変わる。


 「なるほど、俺達には魔力の流れが見えるから索敵は容易と」

 「満月の夜は我ら魔族も強化されます、周囲に被害の出ない所を攻めましょう」

 「了解、それで行こう」


 会議はまとまった。

 周囲に被害を出さない所にいる敵を叩く。

 悪の組織の基地は、結界などで囲ってからならド派手に破壊しても良し。


 「モンスターメイドコマンドーズ、ゴー!」

 「「イエス、マイロード!」」


 基地を出た俺達の、魔女集会へのカチコミ作戦が始まった。

 現場で変身するのではなく、最初から全員で変身して空を飛んで行く。


 「空飛ぶ船か、便利だな?」

 「今までは地球では満月の時しか動かせませんでしたが、お坊ちゃまの魔力を動力にしているお陰で存分に動かせます♪」

 「マミーラのこの船、海も宇宙も異次元も行けるんですよ♪」

 「マミーラさんに感謝ですわ♪」

 「快適でちゅ、ワオ~~ン♪」


 広めで洋風な内装の船室で寛ぎながらの移動。

 俺達はマミーラさんの持つ博物館で見たような、魔法のエジプト船に乗っていた。

 ミイラ達がオールを漕いで空を飛ぶ船、シュールだよ。


 「マミーラさん、何か壁に飾ってる鏡に何か空飛ぶ魔女が映ってね?」

 「敵襲ですね! セベック号、戦闘モードに変形です!」


 いや、船の名前あったんだ?

 船が空飛ぶワニ型のメカっぽい姿に変形して行く様子が俺の変身後の仮面に映る。

 魔界水雷艇セベック号と言う情報が俺の脳裏に浮かぶと同時に、俺は叫んでいた。


 「ブラッディは左舷、アルケニーは右舷に配置、魔力砲発射!」

 「「アイアイサ~~~♪」」」


 気が付くとアニメで見た戦艦のブリッジ風に船の中が変わっており、仲間達とミイラ達が戦闘配置に着いていた。


 「マミーさん、これって家の巨大戦力?」

 「残念ながら、サイズ的にも火力的にも巨大戦力には数えられません」

 「そうか、俺もまだまだ物知らずですまない」


 ゴールデンは観測の仕事っぽい席にいた、蝙蝠だからソナー要因?


 『魔族共が空から攻めて来た! フライングウィッチ隊をなめんじゃないよ!』


 虚空にデジタルスクリーンのモニターが浮かび上がった。

 モニターには箒に跨って飛んでいる、飛行機乗りっぽい姿の魔女の婆さんが叫ぶ様が映る。


 「では我らがファラオには白兵戦をお願いいたします♪」

 「ああ、迎え撃つぜ!」


 俺はマミーからケペシュを借りる。


 「ああマイロード! これも忘れずに!」

 「ブラッディもサンキュー!」


 ブラディからはショットガンを受け取って外へ出る。


 「ヒャッハ~~~♪ くたばれ悪魔野郎♪」

 「それはこっちの台詞だ魔女ババア!」


 周囲に空飛ぶ魔女の群れ、迫りくる敵の航空戦力をショットガンと剣で迎え撃つ。

 敵の少ない穴場狙いの狩りのはずが、敵が結構いたよ!


 敵もこっちもバンバン魔力の弾丸をばら撒き、シューティングゲーム状態。


 どう見ても日本に存在しないであろう、巨大な四本の鶏の足が生えた空飛ぶ城とか月明かりに浮かんでるよ!


 「ヒャッヒャッヒャ、見たか私らの集会場ウィッチキャッスルだよ♪」

 「そうか、殴り込み先から来てくれたとは手間が省けるぜ!」


 飛行服姿の魔女の婆さんが、ポテトスマッシャーをスイングして襲い来るのを避けてはショットガンでスマッシャーを撃つ!


 ポテトスマッシャーの爆発でスマッシュされた魔女が落下して行く、南無三!

 俺は船室に戻ると、仲間達に命じる。


 「良し、海賊戦法で突っ込もう! 」

 「「アイアイサー!」」


 俺達が乗るセベック号は、空飛ぶ異形の城へと突撃する。


 「げげっ! 敵襲っ? 商品を守れ!」

 「うげ! マジで人間もオークションしてやがった、助けるぞ!」


 突入先は魔女達のオークション会場、白衣で拘束された人達が吐いてる檻やらヤバい物がズラリと陳列されて競りの最中だったぽい。

 いや、人身売買とか駄目だわぶっ潰さんと!


 「燃えちまえでちゅ~~っ!」


 ブラッディウルフが口から火を放つ。


 「ヒャッハ~、悪党のお宝を巻き上げだ~~ッ♪」


 ピンクアルケニーは糸を出して振るい敵を切り裂く。


 「ミイラ兵達は捕らわれた人達の救出を!」


 プリンセスマミーはミイラ兵達を率いて捕らわれた人達を運び出す。


 「モンスターメイドコマンドーズ参上ですわ!」


 ゴールデンヴァンパイアはマミー達の盾となり人命救出のサポート。


 「外道共、容赦しねえ! パピルスラッシュ!」


 俺も両手から呪いの包帯を射出して振るい、魔女達をしばき倒す。


 魔界メイド達が大暴れすれば、会場は大混乱となったがどうにか制圧できた。


 「クリアーでちゅ!」


 周囲の臭いをかいで残敵の確認をしてから叫ぶブラッディウルフ。

 テンションがハイになったせいか、キャラがブレてる。

 二足歩行の獣率百パーの狼が赤ちゃん言葉は、一周回って萌えた。


 「よし、人命救助が先だ! 他に捕らえられた人達がいないかガサ入れだ!」

 「「了解!」」


 この空飛ぶ城の主を倒すより先に、人命救助だ。

 他にも誰か捕まってるかもしれないのに城落とせねえよ。

 俺も下手したら、ここの人達みたいに競売に掛けられてかもだし拉致監禁や誘拐はダメだし助けないと人としてアウトだよ。


 「マイロード、命を嗅ぎつけるのはお任せを♪」

 「頼むぜブラッディ!」


 だが急に城が揺れて落下が始まった。


 「ちょ、これはボスが逃げ出したから城が落ちてるんじゃ?」


 アルケニーが慌てる。


 「問題ありません、マイロードと私のバロックバットフォームなら持ちこたえらえますわ♪」

 「そうか、あのパワーなら空中で支えられる♪」


 俺とゴールデンは合体してバロックバットフォームにチェンジし外へ飛び出す。

 城の下に回り込み、手足を肥大化させて空飛ぶジャッキになる。


 「満月の魔力とゴールデンのお陰で、デカい城がクラスの机位の重さに感じる!」

 『セベック号の脱出確認ですわ、魔界の荒野へ投げ捨ててしまいましょう♪』

 「よし、マカイザーホ~~~ル!」


 俺が叫ぶと真下に巨大な黒い穴が生まれる。


 「そいやっ!」


 俺は穴に向けて敵の城を投げ落としてから、穴を閉じた。


 こうして、俺達は魔女集会を潰し助けた人達を対怪人警察へと引き渡した。


 「……ふう、何かこう人助けができて気分が良いぜ♪」

 「いやあ、結構ヤバい状態の人もいたんで人命救助は英断でちたね♪」

 「そうそう、私も応急手当とか頑張りましたよ♪」

 「セベック号に乗せられる程度しかいなかったのが不穏ですが、良かったです」

 「皆ありがとう、しかしマジで悪の組織はヤバいな」

 「ええ、ですからヒーローが頑張らねばならないのですわ♪」


 屋敷に帰り、地下の基地でお疲れ会をしながら語り合う。

 あの城に捕らわれていた三十人程の人命は助け出せた。

 ボスっぽい敵は次に倒そう。


 俺が誘拐されたから言えるが、人さらいは許せない。

 改めて悪の組織は許さねえと誓うのであった。

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