第16話:怪獣ハント

 「君達と武の模擬戦、後半はとんでもない事になっていたな?」

 「まさか、アブダクターが出て来るとは思わなかったぜ♪」

 「俺も同感、何なんだあいつら?」


 学校の教室、HR前の雑談。

 武と俺が会話をしていると金田君が話に入って来た。


 「その、今更だが僕の事も名前呼びで構わないぞ?」

 「ああ、何となく名字で呼んでた」

 「俺も委員長呼びだったな、下の名前なんだっけ?」

 「武、君はひどい奴だな? 高光たかみつだ、日本名は金田高光と言う」

 「オッケ~♪ じゃあ、タカだな♪」

 「武、タカさんが日本名って言ってただろ?」


 俺は金田君をタカさんと呼ぶことにしたが、彼は外人なのか?

 タカさんは、軽くせき込んでから改まって告げる。


 「僕はヒュペリオン星人で、星人名はイーリオと言う」

 「ああ、ヒュペリオンイーリオってタカさんか!」


 俺はその名を聞いて驚いた。

 テレビで見た、宇宙から来た巨人のルーキーヒーローが彼だったとは。

どうりで、UFO狩りに来てたわけだ。


 「そっか、どおりで授業で変身しないと思ったぜ♪」


 武が納得する、巨大ヒーローだとサイズ差があり過ぎるからな。


 「しかし、改まって聞くとヒーローやヒーロー候補の学校だな?」


 使い所のない異能を持ち、一般の学校に通っていた身としてはしみじみと思う。


 「いや、勇太は何をしみじみとした顔してるんだよ?」

 「そうだぞ、自分は範囲外みたいな?」

 「いや、何と言うか俺はまだまだだなと」


 正直、メイド達と出会い力の使い道が出来たとはいえまだまだだなと思う。


 「いや、それが普通だって?」

 「そうそう、ヒーローであれ何であれ道は険しいものだ」


 武とタカさんが呟く。

 先生が教室に入って来てHRが始まりその後は普通に授業となった。


 「巨大ヒーローですか?」

 「この間会った金田君が、巨大ヒーローでさ?」


 帰宅して地下の基地でメイド達と話し合う。


 「ほうほう、あの真面目な眼鏡君が巨人ですか」

 「てっきり、機械的なヒーローの方かと思ってました」


 クーネさんは感心し、マミーラさんは意外をうな顔をした。

 まあ、タカさんは固めな印象からサイボーグかアンドロイドの類かと俺も思った。


 「しかし、宇宙の遠い星から地球迄ご苦労様でちゅね?」


 アネットさんがクッキーを食べつつ呟く。

 確かに宇宙人のヒーローは、遠くから良く来てくれたと言う感じだ。

 俺も縁ができて事件で魔界に行くまでは、日本から出るとか思わなかったし。


 故郷を出て外国どころか別の星に来て暮らすって、どんな気持ちだろうか?

 俺も魔界に行ったら、日本の事を懐かしむ時が来るのだろうか?

 ふとそんな事を想ってしまう。


 「いや、アネットさん達も日本に来てくれてありがとう」


 俺はアネットさん達全員に礼を言う。


 「はう! 不意打ちでときめきまちた! あが、クッキーがのどに!」


 アネットさんが驚き、クッキーをのどに詰まらせる。


  「いや、ハート撃ち抜くなんてずるい~♪」


 クーネさんは背中から蜘蛛の腕を出してみ悶える。


 「はあああ♪ 私、灰になりそうですわ♪」

 「私も、永遠の国へ旅立ちそうです♪」

 「いや、そっちは成仏しないで! アネットさんは背中失礼!」


 ヴィクトリアさんとマミーラさんは成仏しそうになった。

 俺はアネットさんの背中を叩き喉のつまりを取る。


 「ふう、尊くてうっかり死にかけまちた!」

 「いや~~~ん、お坊ちゃまのデレが染みる~♪」

 「クーネさん、紅茶で酔ってますわね?」

 「糸を吐かれるとお掃除が大変ですね~?」

 「いや、色々とごめん」


 迂闊な事は言わないようにしよう。

 メイド達が落ち着いた所で話を戻す。


 「お坊ちゃま、巨大戦にご興味がおありで?」

 「ああ、いつかはやる事になるかなってくらい?」


 クーネさんが俺に紅茶を淹れながら聞いて来る。

 俺としても、まだふわっとした事しか思いつかない。

 いつかは巨大化や、巨大ロボでも使う日が来るかなと言う程度だ。


 「まあ、まずは戸建て一軒家位の奴から体験して見ます?」

 「え、どうゆうこと?」

 「そうでちゅね、まずは段階を踏んで行きまちゅよ?」

 「山梨の方で、小型怪獣が出るとの事で我々も参加しましょう」

 「土日は山梨へ怪獣狩りですね♪」

 「いや、ブドウとか取りに行くみたいなノリかよ!」


 迂闊な事を言った為に、土日の予定が決められてしまった。

 まあ、小型の怪獣を倒せないと巨大怪獣も倒せないよな。


 土曜日、モンスタートレーラーに乗って山梨へ。

 普通に観光でも楽しみたい所だが、仕事だ。

 山梨は関東甲信越の中でも怪獣スポット。

 富士山のマグマが怪獣の卵に適温とか、餌が豊富だの諸説ある。

 山梨県の各地域の山に行けば、熊よりも低い確率だが怪獣に出くわす。

 長野とかもそうだが、日本の山は地底怪獣が出やすい。


 現場である山の入り口近くの駐車場に止まって降りる。


 「良い天気だな、ほうとうが美味そう」


 駐車場近くの店に立つ幟。

幟に描かれた、ゆるい顔の鳥みたいな怪獣のほうとうが気になった。


 「何だ、君達も来ていたのか♪」

 「え、タカさんも? 凄い確率だな!」

 「そうだな、良ければご一緒しても良いかな?」

 「ああ、巨大ヒーローの戦いも気になるしな」


 メイド達の方を見ると同意の頷きがあった。

 六人で入山し、臭いや振動で怪獣を探して歩く。


 「何だ、地震か?」

 「いや、来るぞ!」

 「全員、魔界チェンジだ!」

 「「イエス、マイロード!」」

 「すまない、こちらはまだエネルギーが溜まらない!」


 俺達が変身したと同時に、山肌が崩れ五階建てビル程の怪獣が現れた。


 「牛か? デカいがこれ位なら! マカイザーショット!」


 足と尻尾に棘が生えた灰色の牛もどきの怪獣に対し、俺は火炎弾をぶっ放す。


 『ブモ~~~~!』

 「良し、一撃決めたぜ!」


 俺の技は怪獣の頭を殴り飛ばし山肌へ叩きつけた。


 「この程度ならまだ小型、狩りの時間だぜ♪」


 ブラッディウルフが突っ込むが、頭を起こした怪獣の鼻息に飛ばされる。


 「危ないブラッディ! って、私も~~っ!」

 「はわわ、お二人が飛ばされてしまいます!」

 「マジか、行くぜゴールデン! マカイザーウィング!」

 「承知ですわ!」


 俺とゴールデンが空を飛び、ブラッディウルフとピンクアルケニーをキャッチ。

 その間にプリンセスマミーが、ビームを放って怪獣の注意を引き付ける。


 俺達の攻撃が効いてはいるのか、敵は痛みに悶えつつも目を赤くして襲い来る。


 「よし、僕の出番だ! ヒュペリオン!」


 タカさんが全身を発光させ、金の瞳を持つ銀の巨人。

ヒュペリオンイーリオに変身。

 イーリオは光となって突進し、怪獣に袈裟固めを掛けて寝技で抑え込んだ。


 地上に降りた俺達は、メイド達に下がってもらう。


 「どうするんですか、マイロード?」

 「マカイザーアタックで突っ込み、敵を口の中から爆破する」

 「「畏まりました!」」


 俺はメイド達の魔力を浴び、平屋ほどの巨大なカボチャ型爆弾になり飛んで行く。

 悶えて口を開けた怪獣の中にダイブした俺は、一気に魔力を爆発させた。

 俺の狙いに気が付いたイーリオが技を解いて怪獣に覆いかぶさった事で周囲の被害はなく倒せた。


 敵を倒し、変身を解いた俺達。


 「凄いな、良い必殺技だったよ♪」

 「そっちこそ、俺の考えを読んでくれて助かったぜ♪」


 俺とタカさんは握手を交わす。


 「いや~~、男同士の友情も良いねえ♪」

 「まあ、健全な友情は大事でちゅね」

 「今回は活躍できませんでした~~!」

 「いえいえ、お坊ちゃまに私達が全員で魔力付与をしたのは立派な活躍ですわ♪」


 俺とタカさんの握手する様子を眺めるメイド達が何か言っている。


 かくして、俺達は怪獣との戦いを経験できた。

 やはり巨大な敵には巨大な戦力は必要だなと言うのが、実感だった。

 怪獣は俺の必殺技のせいでひき肉となり、大地の養分となったので儲けはゼロだ。

 この経験を活かして、次は肉が取れるような狩り方をする事を心に誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る